私はそんなに弱くないから | ナノ






授業も終わり隣のクラスのアイリと切嗣を誘って帰ろうと思い、3-2へ向かうと既にアイリの姿は無かった。



アイリは美しい。
女の私から見てもアイリは綺麗で守ってあげたいと思うような子で男子からモテる。

しかし男子からの告白をアイリは断っているのを私は知っている。

つまり…、少なからず恨みも買ってしまっているわけだ。



嫌な想像ばかりが膨らみ、私は切嗣に事情を説明してから隅から隅まで走り回って探していると、体育倉庫裏で見覚えのある美しい銀色の後ろ髪が視界に入り叫ぶ


「アイリ!」

「あ…、アルトリア…?」

「大丈夫ですかっ!」

「えっと…どうしたの?そんなに慌てて?」


普段と変わらない綺麗な笑みで笑う彼女に小さく安堵の息を漏らす。見た所、怪我も折ってないので大丈夫だと判断できるが、私は目の前で柔らかく微笑む彼女に顔を顰めて言う


「どこかに行くなら行くと言ってから行ってください!」

「すぐ帰るつもりだったのよ…。心配掛けてごめんなさい」

「まったく…、切嗣も心配して―」


『アイリっ!!!!!!』


先程私が走ってやってきた方から切嗣も汗を滝のように流しながら走って来た。この様子だと切嗣は校内を先に探し回ってから外に出て来たんだろう。


「見つけたなら報告しろ…、アルトリア…!」

「私も今見つけたんです」

「切嗣にもアルトリアにも心配掛けちゃって…ごめんなさい」


アイリの何の悪気も悪意もない笑みで謝られてしまうと、言いたい事があっても言えず許してしまう。それは切嗣も同じようで、苦笑いでアイリに手を差し伸べた


「もう下校時間だから詳しい話は帰りながら聞かせてもらうよ」


そんな切嗣の言葉を聞いて私は改めて"切嗣はアイリの事を大切に思っている"と言う事を見せつけられたような気がしてならなかった。アイリは美しくて弱くて女の子らしくて…私とは正反対の彼女。





切嗣に心配して貰える彼女の事を少しだけ羨ましいと思っている自分が居た。







普段から言い慣れた言葉なのに今だけは自信を持って言いたくなかった