月曜の昼間、特にすることもない俺たちニートの六つ子は居間で暇を持て余していた。
 付けっぱなしのテレビからは見もしないニュースが流れていて、にこやかな女子アナが「今年の桜は今が見頃です!」と視聴者に話しかけている。
 桜かあ、花見の季節だなあ、あー、ビール飲みてえ。なんて事を考えながら読み飽きたくだらないギャグ漫画のページをぺらりと捲った。

「あ、そういえばさーおそ松兄さん」

 すると、横で十四松とオセロをやっていたトド松が何の気なしに俺に話しかけてきた。漫画から目を離してトド松に視線を向ける。

「んあー?」

「みょうじ先輩いたじゃん、なんかでき婚したらしいよ」

 みょうじ、その名前を聞いて俺は思わず持っていた漫画を落としそうになって持ち直す。それに気付かれないようにトド松から漫画へと目線を変えた。

「…誰だっけ」

「おそ松兄さん覚えてないの?ほら、高校の一個上の先輩でさ、おそ松兄さんと仲良かったじゃん」

「んー…」

 ぺらり、ぺらり、読んでもいない漫画のページを意味もなく捲り生返事を返せば、「もー、聞いてる?」と女子ばりの声を出すトド松。聞いてるし、覚えてる。忘れられるわけがない。それでもやっぱり、「…おー」と気のない返事をして漫画を顔の上に乗せた。

「この前高校の同級生から連絡があってさ、ほら、なんだっけ、みょうじ先輩と仲良かったチャラそうな金髪の先輩いたじゃん。あの人と結婚したらしいよ。しかもさー」

 終わりそうもないトド松の話を聞き流して目を閉じる。みょうじなまえ。忘れたくても忘れられない。そういえば出会った日も、こんな春だった。