※トド松がクズです、好きな方は閲覧注意
世の中で、どうにもなることと、どうにもならないことを数えたら、どうにもならないことのほうが圧倒的に多いような気がする。
「一松、また浮気されちゃった」
「…へえ、またされたの」
「次浮気したら絶対許さないって思ってたんだけどね。でも、それでもやっぱり好きなの。…離れたくなくて、結局許しちゃう。馬鹿だよね、私」
「たしかに」
そこは否定してよ、と今にも泣き出しそうな顔を無理やり笑顔にするなまえが、弟のトド松を好きなのもどうにもならないことで。
「…私がいけないのかな、私だけじゃ物足りないのかな……私じゃ…だめなのかなぁ…っ」
「………泣くな」
ついに泣き出したなまえに、じゃあなまえは俺じゃだめなの、とつい言ってしまいそうになる自分の気持ちも、どうにもならないことだった。
「…いつもごめんね、みっともないところ見せちゃって」
「…別に、気にしてない」
ひとしきり泣いたなまえは、申し訳なさそうに俺に謝ってくる。気にしてない、というのは嘘だった。そんなに泣くくらいトド松が好きなのかと思うと、胸が締め付けられるように痛かった。俺にトド松をどれだけ好きかなんて語ってほしくないし、できることなら、俺を好きになってほしいと思った。
「でも、こんなとこ見せられるの一松くらいだよ。ありがとう」
でも、それでも。なまえがそういって笑うから。俺の横が彼女の泣き場所になっていることに、少しだけ嬉しさを感じてしまう。もうそれでいいかと思ってしまう。
「…一松といると落ち着く」
こてん、と俺の肩にもたれかかるなまえ。たったそれだけで、なきたくなるほど嬉しかった。本当なら、ぎゅうぎゅうに抱きしめて、どこにもいかせたくない。そういったら彼女は、もう俺のところへはもう来ないだろう。
「…一松を好きになれたらいいのに、なんてね」
なってよ、好きに。その言葉は、声にならなかった。痛い、痛い。胸が、痛い。なんでトド松なの。俺は確かにクズだし、ごみだし、生まれてこなければ良かったような男だけど。だけどなまえを泣かせることはしない。絶対にしないのに。
「……変なこと言っちゃったね、ごめん。トド松からメール来たや…私、いかなきゃ、本当にありがとう、一松」
なまえがいなくなった部屋に一人、俺は部屋の片隅で膝を抱えた。
「…好きだ」
その言葉は、いやに虚しく部屋に響き、そうして音もなく消えていった。
どうにもならないこと
（君があいつを好きで、俺が君を好きなこと）
＃11/16/15