彼女を意識しだしてから僕はもう純粋無垢な子どもじゃなくなったのだとおもった。 我慢しきれなくて肩に手をかけた。想像していたよりももっと薄い肩。お嬢さまがどれだけ女の子かってことを、そういうところに改めて教えられる。僕とは違うからだをしている。僕とは違う膨らみや円み、繊細さを持ち合わせている。そして僕はそういうことを実感すればするほど、お嬢さまを欲求したくなる。 少し力をいれれば簡単に倒れた。今朝僕が整えた柔らかな寝台が彼女を受け止める。僕のからだの下にお嬢さまがいる、不安げで、何が問いたそうな眼をしながら。 僕は男だった。幼く頼りなさそうな顔つきからだつきをしていても、僕は十五歳の男だった。たった十五歳の、それでも知っていることはたくさんあった。例えば今この状況が何を示すのかも、こういう時どんな風に彼女に接すればいいかも。 「瞬くん、駄目」 乾いた返答。 その否定は、意外でもあったし、予期していたと言えばそうでもあった。彼女はただじっと僕の眼を見た、揺れる瞳で僕の眼を見た。ほんの一瞬だって逸らされなかった。その強情さに僕は耐えきれずに眼を閉じる。 「僕が子どもだから?」 震えた声がどこか間抜けにおもえた。彼女の真っ直ぐさが眩しく感ぜられ、いつだって適わないひとなのだということを痛感する。 「僕がたった十五歳だから駄目だって言うんですか」 「瞬くん」 慰めるように彼女が僕を抱きしめた。親が拗ねた子どもにするようなそれだった。ちがう、と僕はおもう。僕が欲しいのはこういう愛情ではないと。ひたすら求めたのは、他に何もいらなくなるような口付けだった、溶け合う位の熱の愛撫だった、からだを独占する横暴、胸を満たす愛しみの言葉、そういう類のものだった。十五の僕は、優しさだけで作られた感情ではもう満足したりはしない。 「でも僕は知ってる、知っています、あなたが、お嬢さまがどれだけ魅力的かってこと……………」 そうだ、それがわからないほど子どもではなかった。けれども発熱しはじめた欲望を抑えられるほど、僕は大人でもなかった。 ボーイフレンドの唇 |