背骨は毎朝足の裏で感じた。ごつごつと、それでいてしなやかな骨の感触。征服した地上をあるくみたいに堂々と左足を踏み出す。ぐらつく地面、乱暴な足取りにバランスをとろうとして平均台を辿る時のように両腕を広げた。鳥になる、飛行機になる、キャミソールから伸びる白い二の腕は、飛ぶにしてはあまりに頼りない両翼。ゆっくりともう片方の足を乗せ、自らの体重を掛けていけば、その足の下の生き物が苦しそうに呻く。


「ば、かナミ、その起こし方やめ、ぐえ」

「何よ、重いっての?」


咎めるみたいに軽く背中を蹴った。その瞬間に彼はぐるん、と回転して、一気に足場を失ったわたしは柔らかなシーツにダイブすることになる。

何するの!と寝癖だらけの黒髪の男を睨んだ。目が合ったかと思えば、彼の両腕がわたしへと伸ばされてあっという間に組み敷かれる。


「いいか、ナミ。船長の起こし方ってのはこうだ」


両手で頬を挟まれ、幾度ものキスが降ってきた。いつもの下手くそなそれだった。まるきり野性的な素直さと貪欲さで、触れては舐め、吸っては押し入って、すべてを掠め取って行こうとする熱情。彼の、ライオンみたいな横暴さと、ミルクを舐める子猫みたいな直向きさ。

キスで目覚めるなんてあんたは一体どこのお姫様、そう文句を言うよりも早く、わたしの腕はルフィの首に回されていた。いいわ最後まで乗ってあげる、そう喧嘩腰で受け入れるのは建前、本当は、疼く胸元をはやくどうにかして欲しかった。



  お早う背骨



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