跡部/その視線に釘付け



最近、名無しの様子がおかしい。


「名無しってば!」

「え、なに?」

「もうー、ちゃんと聞いててよ!」

「ごめん、ごめん!ぼーっとしてた」

「最近多くない?授業中も上の空だし。何かあった?」

「何もないよ。春だからじゃないかなぁ?慈郎だって、ポカポカしてて眠くなるでしょ?そんな感じ」

「そっかぁ、それならわかるかも!」

「今度はちゃんと聞いてるから、話し続けて?」

「うん!それでね…」




ねぇ、名無し。


その瞳に誰を映してるの?




――――――――――――――――――




「跡部君」

「あぁん?」

「今日、日直だよ」

「わかってる。お前は日誌書いてろ。俺が戸締りしてくる」

「うん」




「まだか?」

「あ、うん。もうちょっと」

「早くしろ」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「あ」

「気をつけろ」

「イタイ」

「見せてみろ」

「オイ、そんな目で見るんじゃねぇーよ」

「え?」

「欲情してんだろ」




ごめんなさい、慈郎。


あなた以上に好きな人と巡り会ってしまったの。




――――――――――――――――――




纏わり付く視線には、とっくのとうに慣れた。


「もうやめろ」

「え?」

「ウゼェんだよ。お前の視線」

「……ごめん」


そう謝りながらも、その視線の熱さはなくならない。


「俺に何を求めてる?」

「何も求めてないよ」

「嘘をつくな」

「跡部くんの考えすぎ」

「お前のことなんか考えてねーよ。慈郎を心配してるんだ」

「慈郎が羨ましいな」

「傲慢だ。そして、とんだ偽善者だ」

「どうしたらいいかわからないんだもん」


女に不自由したことなんて一度もない。
目の前にいる女は、特別美人でもスタイルがいいわけではない。

気になったのは、こいつの視線。

ウザイほど俺様を見てきやがる。
それはそこら辺の女たちと一緒だ。
違うのは、何も求めてこない。
金も快楽も。
その純粋な視線を汚したら、どうなんだろうな。
それも楽しみだ。




「後悔すんじゃねーぞ」




そう言って、目の前の女を組み敷いた。




END


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