不二/100年後のアイ・ラブ・ユー
情事が終わった後のまったりした雰囲気が好き。
お互いの体をくっつけ合ってじゃれるのが好き。
名無しの幸せそうな顔を見ながら眠りにつくのが好き。
名無しと一緒にいるのが好き。
「時々、夢を見るんだ」
「どんな夢?」
「僕と名無しが向かい合ってる夢。僕は第三者の目線でその二人を見てるんだ」
「変なの」
「そう、変なんだ」
自分の顔を持つその男を見ている自分がいる。
「辺りを見回しても今の時代のものじゃない」
「でも私と周介がいるんでしょ?」
「うん」
名無しはなにがなんだかわからないように首を傾げる。
僕も最初はわからなかった。
だけど何回も同じ夢を繰り返し見ていくうちに、わかってしまったんだ。
「なんだと思う?」
「わかんない」
「僕たちの前世だよ」
普通は笑ってしまうところも、名無しは真剣にうんうんと頷いて、それでそれでと続きを聞きたがる。
そんな名無しが大好き。
「それで僕が何か言おうとすると、いつもそこで終わっちゃう」
「えー」
「でも、その時僕が名無しに言おうとしてたことはわかるんだ」
「なあに?」
それは僕達が生まれる前から決まってたことなんだ。
「愛してる」
だから僕達は世界の63億人いる中から、こうして出会えたんだ。
「前世でも僕は名無しを愛してた」
名無しは納得したように首をうんうんと縦に振る。
その度、柔らかい名無しの髪が揺れて甘い香りが漂ってくる。
「私もわかった!前世の私が、前世の周介に言おうとしてたこと」
「なに?」
「来世でも愛し合いましょう」
夢の中で名無しはただ笑っているだけだったけど、生まれ変わりの名無しが言うんだからきっとそうだろう。
夢を信じる僕も名無しも馬鹿なのかな。
「最高だね」
「ほんっと、最高!」
「素敵だよね」
「素敵、素敵!」
僕達は何度も生まれ変わり、何度も出会い、何度も愛し合うんだ。
100年後のアイ・ラブ・ユー
END
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