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国家の安全すら脅かしかねない敵(ヴィラン)の犯罪行為を取り締まる警察機構とは別の対抗措置として、個性を犯罪抑止力および人道的活動に利用するヒーローを育成するべく設立された国立学校の1つ。

その名も「雄英高校」。

ヒーローの全てを教えるヒーロー科の他にも、普通科、サポート科、経営科の3つのクラスが存在している。
ヒーロー科はもちろん一番人気の学科なのだが、入試倍率は300倍と超難関。
No.1ヒーロー「オールマイト」やNo.2ヒーロー「エンデヴァー」、No.4ヒーロー「ベストジーニスト」の出身校であり、彼等の他にも名だたる数々のヒーロー達を輩出してきた名門校。
それ故に「No.1ヒーローになる為にはこの高校に入学し、卒業しなければならない」と言われるほどの偉大なヒーローになるための登竜門としての地位に存在している。






壮絶な倍率の入試に合格した者達は、意気揚々に雄英高校の門をくぐった。

初日は普通の学校で行われるような入学式、ガイダンス等は行われず、早々にジャージに着替え、グラウンドで個性把握テストが行われた。
1-Aの担任、相澤消太(ヒーロー名「イレイザーヘッド」)曰く、悠長な行事に出る時間はないとのこと。
そして、翌日。


「入って来い」


昨日と同様、やつれた様子の1-A担任の相澤が始業のベルとともに教室のドアを開けた。
教壇の前に立つと、ドアの方に目を向け教室内に入ってくるよう促す。
一拍置いて女生徒が下を向いたまま入室してきたが、長い髪によって顔色は表情は窺えない。


「誰だ?」

「昨日はいなかったよね?」

「私語は慎め。合理性に欠ける」


シーン


相澤の横に並ぶ女生徒は、まだ顔を上げない。


「1日遅れだが、クラスメイトだ。諸事情で今まで自宅学習だったため、学校に通ったことがない。知能は年齢相当だが、協調性に関しては小学1年生だと思って接してくれ」

「小学1年生って」

「本人を前にしてひでー紹介だな」


生徒達は相澤の言葉に再度ざわめきだす。


「ほら、自己紹介しろ」

「…」


相澤に促されやっと顔を上げた女生徒は、眉を八の字に曲げ目線はぐるぐると教室内を彷徨い、相澤に目線を向ける。
そしてしばらく見つめた後、体を方向転換して扉に向かって歩き出そうとするが、その行動を読んでいたかのように、相澤は女生徒の腕を掴んで行動を諌める。
女生徒の掴んだ腕を引き寄せ、小さな声で何かを耳打ちしている。


「何て言ってる?」

「全然聞こえないよ」


最前列に座る青山や尾白は耳をそばだてるが、何も聞こえなかった。
しかし、最後の一言はきちんと耳に届いた。


「嫌いで結構。それと、ここでは相澤”先生”だ」


嫌いで結構?
あの子、相澤先生に向かって「嫌い」って言ったってこと?
前列の生徒たちは互いに顔を見合わせる。



「…名無し名無しです。よろしく、お願いします」

「それだけか?」

「わからないことが、多いので、たくさん、教えて、ください」


先程の不安そうな表情からは一転、これでどうだ、という顔で名無しは担任でもある相澤を涙目で睨み付けた。


「ずいぶん暗えの来たなー」

「でも、顔は可愛くね?オレ、タイプー!」

「緊張してるんだよ。学校に通ったことないみたいだし」


切島、上鳴、耳郎は、名無しの相澤に対する一連の態度に驚愕しつつも興味津々である。


「ぎりぎり及第点だ。と、いうことだ。名無しの席は轟の後ろだ」

「こちらですわ」


八百万は手をまっすぐ上げながら立ち上がり、名無しを自身の斜め後ろの席へ案内する。


「八百万 百と申します。よろしくお願いしますね、名無しさん」

「ありがとう、八百万さん。こちらこそ、よろしく」


まあ、なんて可愛らしい方。
未だに涙をためた目でぎこちなくお礼を言う名無しに、八百万は愛らしさを感じた。

椅子を引いて座った名無しは、ふう、と一息つき鞄を膝元に抱える。
この席だと名無しより後ろには誰もいないため、視線を感じずに済むようだ。
相澤の配慮があるのだろう。


「互いの自己紹介は休み時間にしろ。すぐ授業が始まる。各自準備しろ」


相澤が退出し、各々授業の準備を始める。
名無しの前に座っている男子生徒が振り向き、抱えている鞄を指差す。


「鞄は机の横に掛けるといい。1限目は英語だ」

「う、うん」

「轟 焦凍だ。わからないことがあったら聞いてくれ」

「よろしく、轟、くん」





通年、行われることがないことが行われた。
それは定員が1名多いこと。
今年の1-Aは21名だ。






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