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女児は絶叫した瞬間、無意識に目を強く瞑った。
からん、と何かが床に落ちる音がし、目を開けてみると自分に向けられていた物が床に転がっている。
体に感じていた母親と父親の重みは感じない。
パパとママは私を助けてくれたんだ。
きっといつも通りの優しいパパとママがいるはず。
そう思い両親がいるであろう上に目を向けると、想像と違う光景であった。
まるで白い紙を切り刻み、空に向かって放り投げたように。
上から小さな紙がぱらぱらと舞い落ちている。
「パパ…?ママ…?」
まだひどく痛む足を引き摺りながら体をお越し、きょろきょろと周りを見渡してみるが二人の姿は見当たらない。
「うわぁぁあああん!!パパー!!ママー!!」
意味がわからず、女児は泣き続ける。
「うあああぁぁ!!ひぐ、っ、パーパー!!マーマー!!」
「どうした!?何があった!!」
いつもと違う様子に気づいた近隣住民が、夫婦の家の前に集まってきていた。
いつも声が聞こえない女児の叫ぶ声が聞こえたからだ。
これは不味いと思い、警察へ連絡しなければと集まっていた一人が携帯でダイヤルしている矢先であった。
女児の泣き叫ぶ声で両親を呼んでいた。
男達は門を潜り、玄関のドアノブを捻るが案の定鍵が掛かっていたため、開いているであろう窓を探す。
「あったぞ!ここだ!ここだぞ!」
換気のためか数センチだけ窓が開けられているが、分厚いカーテンは閉められたままで中の状況は掴めない。
しかし、中から聞こえる女児の泣き叫ぶ声はただ事ではないことを表している。
「うあああぁぁ!!ひぐ、っ、パーパー!!マーマー!!」
「どうした!?何があった!!」
女児が説明できる訳はなかったが、尋ねずにはいられない状況であった。
数人の男達が土足のまま室内に飛び込むと、今までに見たことのない悲惨な光景が目に入った。
女児の衣服は血にまみれ、床を汚している。
その周りには一つの包丁、そして小さな白い紙と血で染まったであろう小さな赤い紙が散らばっていた。
しかし、先程まで声がしていた夫婦は姿はなかった。
「強盗か?」
「荒らされた場所はないみたいだが…」
「どこにいったんだ?2階か?」
「人の気配がしないが…」
「とにかく、この子を連れて外に出よう。警察が来るのを待つんだ」
「そうだな」
男達が入ってきた事に気づかないのか、大声で父親と母親を呼び続けている。
「もう大丈夫だから」
そう言って、一人の男が上着を脱ぎ女児をそれでくるみ抱き上げた。
家が荒らされた形跡はない。
床に広がる血液、女児の衣服に付着した血が、女児の血液と致した。
しかし、女児に傷痕はない。
そして、両親は行方不明のまま。
事件は、終結した。
了
だんれも出でこない、残念な回。
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