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▼ 石田三成と恋

「……センパーイ!早く終わらせてくださいよーぅ!!」
「部室の鍵ならば、私が閉めると言っているだろう。」
「マネージャーの仕事なんですけどー。」

大会前、何て事も無いただの放課後。
部活はとっくに終わってるのに、一人で素振りをやり続けている先輩がいる。
一つ上の先輩、石田三成先輩だ。
鬼気迫るその様子に、声を掛けちゃいけない気もするけど、今日も帰る時間をとっくに過ぎてる。
毎度の事に、顧問の先生にも呆れ顔で石田先輩を帰すように、って言われてきた。

「お前は帰れ。私はまだ残る。」
「そうも行かないんですってば。
先輩が終わるまで、私も帰りませんよ。」
「……ならば、邪魔はするな。」
「帰ってはくれないんですよねー……。」

このやり取りもいつもの事。
仕方なく、一人分のドリンクとタオルを準備して、邪魔にならない場所にそっと置く。そこまで準備して、石田先輩を眺めるのもいつもの事だ。

「一つの事に夢中になれるって良いなぁ……。」

手の甲で汗を拭う先輩にタオルを手渡しながら、私は気付かぬうちにそう呟いていたみたいだ。
一瞬、目を見開いた先輩が、何を言っているんだ、と言わんばかりの呆れた表情になる。

「……わかめ、お前も夢中になれているから、マネージャーをやっているんじゃないのか?」
「あ、ハイ。そうですよね!」

呆れすぎて、先輩の表情はもはや、半眼と言っても過言じゃない。
でも、そんな表情も似合ってますよ、石田先輩!

「……私は、不器用な人間だ。一つの事にしか集中出来ない。」
「知ってます。」
「だが、刑部のアドバイス、そしてわかめの的確なサポートのお陰で、私は何とかやってこれている。」

そう言う石田先輩は、普段通りの無表情。
でも、その視線は普段よりだいぶ優しい。気がする。
そんな先輩に見惚れてた、なんて言えるはずも無く、飲み終わったスポーツドリンクの容器を、無造作に渡された私は、慌ててそれを落とさないように持ち直した。

「これからも、刑部共々、私のサポートを頼んだ。」

……………………。
ですよね!大谷先輩がメインですよね!!

でも、そんな分かりきってた事を言われても、石田先輩に信頼されているのは事実。
それに、まるで残っている私を労うかの様に、軽く叩かれた肩に、石田先輩の体温がちょっと残ってる。

「はっ、はい!喜んで!!」

それでも、簡単に喜んでしまう私は、誰よりも先輩に夢中になってるんだと思う。

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