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▼ 猿飛佐助と恋

今日はついに本番の日。
汗をかくのは柄じゃないけど、心なしか張り切っているのは、あの子に会えるから…なんてね。
今も探している自分がいる。

「━━わかめ」
「!佐助さん」
「ポニーテール?可愛いじゃない」
「あ、ありがとうございます。」
「今日の騎馬戦宜しく。敵同士だけどさ、俺様容赦しないよ?」
「…はい。」

さあ、体育祭の始まりだ。

「よーい始め!」
試合開始。わああ、と声が飛び交う。一本取られた者、取った者。旦那の「勝負う!」って声も聞こえる。
…何組みか騎馬どころじゃないチームもいるけど……。

「あっ……」
「! わかめ!」
「おい、そこの騎馬狙え!」
「っ!!」
(━━とうとう来たか。)
よくわかめ残ってたな…なんて。
「悪いけど容赦しないよっ!」
「こちらこそ…!」
がしっ!とわかめの手首を掴んだ━━━━「スキあり!!」
「えっ」

「……あれ……?」
「さっ佐助さん!?」
「……はは、普通に取られちゃった。」

まさか俺様が脱落なんて誰も思いもしなかっただろう。取ったわかめもぽかんとしている。
「…んじゃ、一旦抜けるわ」
「あ……」
(はあ、らしくないわ…)

わかめの手首を掴んだ時、一瞬風が吹いた。わかめの髪が靡いて、それに見惚れた…………なんて、旦那にだって言えないけど。
━━━━━━━━━━━━━

「はあ、ついに借り物競争…!」
走るのは苦手だけど頑張らなければ。佐助さん見てるかな………いや、またそこで佐助さんが…。
最近変な人がいる。いつも話し掛けてくれる佐助さん。文武両道、器量良し、そんな人が何で……。仲良くなったばかりで、まだ知らないことばかりだけど。チャラいように見えて、真面目な所もあるのかな、なんて…。
でも何でさっき鉢巻き取られたんだろ。佐助さんらしくなかったなあ。

そうこう考えてる間に競争が始まる。
パーン!と音がして、無我夢中に走った。
「えっと、お題は…!」
━━自分より背が高い人
何てラッキーなお題!殆どの人が私より高い。こ、これはチャンス……!
「よし、誰か……」

「あ、わかめ、なーんか無理難題に当たっちゃった?」
「佐助さん!」

カメラを持った佐助さんが居た。新聞部の活動に回ったのだろうか。
……佐助さん、選ぼうかな。でも誤解されるだろうか。
それも悪くないと思っている自分がいて、顔の熱を払うように、彼の元へ走った。

(…押しも、大事……!!)
学園の美人秘書さんに言われたことを思い出し、私は佐助さんの手を取った。
「わかめ……!?」
「佐助さん!一緒に来て下さい!」
素直に佐助さんと走りたい。
……赤面、隠せてないけど。
でも、確かに感じた佐助さんの速い鼓動、信じても良いのだろうか。

━━━━━━━━━━━━━━━

まさか、わかめがこんな積極的だなんて。自分でも普段を装うのが精一杯なんて笑えない。……いや、マジで。
お互いの速い鼓動が妙に照れくさかった。
こんな初な感じ、旦那じゃあるまいし……。

まあ、でも━━━━━


二人が考える未来は、案外、そう遠くないのかも知れない。

二人の熱を冷やすように吹いた風が心地好い、午後の日だった。



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