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▼ 真田幸村と恋

「わかめ殿!良ければ一緒に…!」

あぁ、また真田君だ。私が何ていうか分かってる癖に毎回誘ってくる

「ごめんなさい、今日は練習する予定じゃないから…」

「う…そ、それじゃあ!練習を見ていて下され!」

…見る位なら良いか

「うん、見るだけなら」

「!!それでは早速行きましょうぞ!」

何故私が真田君にこうやって手を引っ張られているか、話すと少し長くなるけれど簡単に纏めると…

私は昔からサッカーを習っていて放課後リフティングしているのを偶然見られてしまい、それからというもの練習を一緒にしようと誘われている。本当に後悔している、こんな事になるなら休日まで待てば良かったのだ

「それでは某は行ってくるでござる!わかめ殿、絶対に帰らないで見てて欲しい」

「あぁ、うん。帰らない帰らない」

「…少し不安でござるが…」

まあ大丈夫だろう、と行って真っ黒真田君はグラウンドへと走って行った。…怖いね

「あれ、わかめちゃんじゃん。やっと旦那の恋人になったの?」

「違うよ、返事すらしてない」

「えっ、マジで?旦那あんなに喜んでるけど…」

「ここに来るときに手繋げたからじゃない?」

「あの旦那が!?わかめちゃんの手を…!?……旦那、成長したねぇ」

コイツは猿飛なんとか君、名前は忘れた。真田君のお母さん兼サッカー部マネージャーをしてる。猿飛君は本当に良いお母さんだと思う、炊事洗濯何でもござれ

「あ、俺様そろそろ行かなきゃ。またね〜」

沢山の洗濯物が入った籠を抱えながら去っていく猿飛君に手を振ってグラウンドに目を移した。真田君は真面目な、でも楽しそうな顔をしながら走っている。…サッカーが楽しいのは分かる。私も真田君には負けない位サッカーが大好きだと胸を張って言えるから

「………」

何となく、本当に何となく立って歩いた。勿論、グラウンドに向かって。そこで練習してるのは真田君と他には三人くらいしか居なかったのもあるけれど、ボールを蹴りたくなったから

「真田君、ボール一つ貸して」

「っわかめ殿!?ボ、ボールでござるか!それでしたらこれを!」

「ん、ありがとう。しばらく借りて大丈夫?」

「う、うむ!」

真田君から借りたボールを持って少し端の方に歩いて行き、まずは膝で何回か跳ねさせた。…うん、良い感じに空気入ってるね

スカートのままだと蹴りにくいからズボンを履いてスカートを脱いだ。その時に真田君が鼻を抑えたのは見なかったことにしよう。一人で走り回るのは嫌だからリフティングだけしよう

ポンッポンッポンッと感じ慣れた心地良い振動と音を受けながらひたすら蹴っていると真田君が話しかけてきた

「…わかめ殿、少し良いでござるか?」

「あ、ごめんね。ボール返すよ」

「い、いや!そうではなく…」

「ん?」

「その、某と勝負して欲しいのでござる」

「真田君と?…うん、別に良いよ。でも何も無しで勝負するのつまらないから、条件付けよう」

「条件…。…それでしたら、某が負ければもうわかめ殿に付き纏いませぬ」

「……真田君が勝ったら?」

「今まで以上に引っ付かせて貰うでござる」

「…待って、ちょっと考える」

私が勝てば今まで通りの生活が戻ってくる…でも負けたらこれまで以上に……

「…分かった、しよう」

「それではリフティングの回数で競うでござる!回数は佐助と前田殿に数えて貰うでござる、五分間にどちらがどれだけ蹴れるか。落としてしまったらその時点で負けでござる。…それでよろしいか?」

「うん、いいよ」

私がこの勝負に乗ってくるって分かってて言ってきたな?負けるつもりは無いけど…用心するに越したことは無いかぁ

少し肩慣らしならぬ足慣らしをしてから横に並んだ

「わかめ殿。某、負けるつもりはございませんぞ」

「それはこっちもだよ。もう付き纏われるのは勘弁だからね」

そして今、猿飛君の持っている笛から開始の音が鳴った

────五分後

「はい、結果これね。右のやつがわかめちゃんで、左のが旦那の結果」

そう言って渡された紙には、1863 1869と書かれていた

「……っ!!」

「あ、ちょっと真田君。どこに行く…の…もう見えない」

「あーあ、わかめちゃんが旦那泣かせたー。俺様知ーらない!」

「…探しに行け、と?」

「え?行かないの?うわー旦那可哀想ー得意なサッカー負けてしかも大好きな女の子に負けて傷心してる旦那慰めに行かないんだーうわー」

「分かったからその言い方やめて!」

…なんで勝ったのに慰めに行かなきゃいけないの……。まあ、ちゃんと返事しないといけなかったから丁度良いか

「…あ、いた。おーい、真田くーん」

「…………」

「拗ねてるの?泣いてるの?」

「拗ねてはおらぬし泣いてもない」

「泣いてるし拗ねてるじゃん」

「…………」

「うん、私に負けたのが悲しかったんだよね。分かるよ、気持ち。得意なサッカーで負ける気持ちは分かるよ」

「…失恋した方はわかめ殿には分からないでござろう?」

「うん、分かんない。でも真田君も分からないまま終わらせるつもりだったんだけど…」

「そ、れはどういう事で…」

「付き纏わないって約束しただけで振った事になると思った?勝負終わったら、勝っても負けても言うつもりだったんだけどね」

目を真っ赤にした真田君がこちらをバッと振り向いた。座っている真田君と目が合う様に座って言った

「返事遅
くなっちゃってごめんね。私も真田君の事好きだよ」

「……え?」

「あれ、聞こえなかった?」

「いや、聞こえましたが…。某てっきり嫌われているものだと…」

「あはは、嫌いだったらこうやって話したり練習見に行ったりなんかしないよ」

「そ、某…ずっと嫌わ、れてると、思って……!」

「嫌われてると思ってたのにあんなに話しかけに来てたんだ…。あぁ、ほら泣きすぎたら目腫れちゃうよ」

「っ……!わかめ殿!!もう一回、言わせて貰いたい!俺と、付き合って下さい!」

「はい、喜んで」

笑顔で答えると真田君が抱きついてきて、そのまま尻餅を付いてしまったけれど咎めようとは思わなかった。笑い泣きしながら抱きついて来る真田君の顔を見たら言う気も失せてしまったのだ

「今までごめんね、泣くだけ泣いちゃいなさい」

「グスッ…元はといえ、ばわかめ殿が…!」

「うん、だから抱き着いてるの何も言ってないでしょ」

真っ黒だと思ってたけど、真っ白…なのかな?最初は罰ゲームか何かだと思ってたけれど、真田君が諦めずに話しかけてきてくれて嬉しかったのが最初だったかな?

いや、サッカーしてたら凄い勢いで話し掛けてきた時のかな?あの時は凄く怖かったわ、鼻息を荒くして目がギラギラしてた

「わかめ殿…」

「ん?何、幸村君」

「!…その、好きだ」

「……幸村君って隙を突いてくるよね。うん、知ってるよ。私も幸村君の事好きだよ」



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