クリスマスor正月 | ナノ


▼ 伊達政宗と恋

『Sorry. 今日も定時に上がれそうに無ぇ。』

何度見ても、その素っ気ない文章が変わるわけでもなく。
私は、溜め息と一緒にソファに倒れ込んだ。

「……そうだよね、忙しいもんねー……。」

クリスマスは、久し振りに二人でいようねって約束したのに。
そんな約束をしたのが、もう遠い昔みたいだ。
日に日に忙しさを増す政宗に、私はクリスマスの話題を出すことさえ申し訳無くて。

クリスマスは一人で過ごすんだと、心の何処かで覚悟はしてたけど、やっぱり寂しいものは寂しかった。

「……会いたいよ、政宗……。」

そう呟いた私の声は、寂しさを紛らわせる為のバラエティの笑い声に掻き消された。


******



「……、おい、……こんぶ。」
「…………ん……?」

あれ……?政宗の声が聞こえる……?
夢見てるのかな、私……。

「Shit!定時で上がれねぇってだけでふて寝かよ。」
「……政宗……?」
「Of course!お目覚めか?honey。」
「どして……?」

夢じゃない。
目の前に政宗がいる……!
寝ぼけ眼の私に、政宗はニヤリと笑うと、私の手を引いて、彼は何処かへと誘う。
上着を着せられ、車に乗せられ、何処へ向かうんだろう?
聞いてみても、政宗はいつもの笑みを浮かべるだけで、何にも教えてくれない。

「もう少し待ってろ。
……Shit、間に合ってくれ……!!」

腕時計を確認しながら、政宗はようやく拓けた場所に車を止めた。
上着を着てても、やっぱり寒い。
そんな私に、いつの間に買ったのか、 政宗がホットコーヒーを渡してくれた。

「……イルミネーションよりも、こっちの方が良いと思ったんだ。」

私達の視界いっぱいに、夜空が広がっている。
俗に言う、満天の星空ってやつ。

「約束、したからな。
間に合わねぇかと焦ったけどな。」
「政宗……!」

覚えてくれてたんだ……!
思わず顔が綻んだ私に、政宗は一瞬目を伏せると、何やら視線をさ迷わせ始めた。

Ahとか、Uhとか聞こえてくるけど、急にどうしたのかな。

「……知ってるか?」
「何を?」
「…………夜空の星ってよ、全部数えるには、人の一生じゃ足りないって。」
「……そりゃ、全部数えるのは大変だよね。」

目に見えない星まで数えてたら、それこそ天体研究者にならなくちゃいけない。
……星が見えるから、星の話を始めたのか、と一人納得しかけた私の答えが気に入らなかったのか、政宗は舌打ちした。

「……Shit!あー、だから……。
俺と、一生かけて星を見ないかって話だ!!」
「……私に学者になれっての?」
「…………お前って奴は……。」

今度はガックリと項垂れた。
……何なの?ホントに……。

「……俺の、一生をお前にやる。
だから!お前の一生を俺にくれ!!」

そう言った政宗は、ポケットから指輪を取り出した。
星が刻まれた指輪。
輝く光が嵌め込まれた指輪。

「……これ、ひょっとして……。」
「……ここまで言わねぇと、分かってくれないとは思わなかったぜ。
けど、そう言うことだ。……You see?」
「あ、I see……。」

け、結婚……。
ま、政宗が、私と……?
混乱と嬉しさで、思わず涙ぐんだ私を抱き締めて、政宗はいつまでも私の背中を撫でてくれていた。




20141225.
伊達政宗とクリスマス

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