えっ?(オル出/R-15)




☆ 若干のスケベ?時空。倫理観がアウトですが、ケーキバース(もどき)の性質上仕方がなかった。唐突に始まって唐突に終わります。オルがフォークで、出久くんがケーキ。出くん視点。



◇◇



「舐めても……いいかな……?」

 頼みごとがある、と言われて仮眠室に来た結果がこれだ。オールマイトは土下座せんばかりの勢いで頭を下げ、僕が驚くまもなく今度はグイグイと僕に詰め寄ってくる。嘘だろ? なんの冗談? でも彼の目は真剣で、動揺で震える背中を冷たい汗が伝った。肩甲骨の窪みをなぞるように落ちていく雫に、ぞわりと身体中のうぶ毛が逆立つ。

「こんな、こんなこと……ッ、君に頼むなんて頭がおかしい奴だと思われても仕方がない……が、頭がどうにかなりそうなんだ……。すまない、本当にすまない、緑谷少年……」

「なっ、舐めるっていうのは……その……手とか、ですか……?」

 オールマイトは視線を上から下まで満遍なく動かした。迷っている、ように見える。何を迷うことがあるのか。だって、舐めるなんて、手以外の選択肢があるわけ――。

「うん、とりあえず手で」

「とりあえず……?」

 その大きな身体を丸めこむようにソファーによじ登ってきたオールマイトは、やけに恭しく僕の手を取った。目線は自然と指先に向かう。今朝切り揃えたばっかりの爪を彼の指の腹が撫でた。ゾクゾク、と頭のてっぺんが痺れる。「オール、」マイト……と彼の名前を呼ぼうとして、その声はヒュンと喉の奥底に引っ込んだ。

「ひぇっ、え……あぅ……」

 言葉が変な音になる。喉が脈打って喘ぐような息が漏れて、それが妙に恥ずかしくて、現実から目を逸らすつもりで視線を動かした。けれど不思議な引力が僕を捉えて離さない。青い炎は欲に濡れて光っていた。細い光は消えそうな程に小さかったけれど、絶対に消えないだろうという、根拠もない不明確な力強さがある。
 オールマイトは、僕の人差し指から左へと順繰りに舌をすべらせた。一本一本を馬鹿丁寧に舐りながら、ときどき指と指の間の付け根にグリグリと舌先を押し付ける。「んぁッ」とひときわ大き声がこぼれると同時に、下半身――特に腰周りがビクリと跳ねた。

「あっ、ま、まって……待ってくださ……」

「ん……? どうして……?」

「へんッ、変なんです、ぼく……」

 ぎゅうっと膝を擦り合わせることで事なきを得る。そうでもしないと内側の何かが爆発してしまいそうだった。僕の中のワン・フォー・オール……ともまた違う、形容し難い熱の塊がグラグラと滾っている。
 オールマイトは何も言わずに手首に軽く齧り付くと、おもむろに顔を上げた。乱れた前髪に隠れてしまって、彼の表情は読めない。じっとりと汗ばんでいる。マッスルフォームならまだしも痩せた身体にこんなことを言うのはおかしいが、きっちりと絞めたネクタイで首周りが窮屈そうだ。

「オールマイト……もう終わりで、」

 不意にぺろりと耳たぶを舐め取られ「ひぁっ!」と叫んでしまった。身体を引き離そうと両腕を突っぱねるが、オールマイトは僕よりも遥かに身長が高いので意味が無い。上から覆い被さってこられては、逃げ場なんて。

「あっ、や……やめて、ください……! は、ぅ、くすぐったッ、」

「みどりや少年……きみは甘くて美味しいな」

「ひょわっ……」

 首筋に熱い吐息が吹きかけられた。ゾクゾクする。甘くて美味しいってなんだ。僕は彼に食べられてしまうのだろうか。わけの分からない期待に、胸の奥が打ち震えた。


◇◇


(見切り発車すぎた)




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