「ねぇ、リヒターって夢とかあるの?」
「……は」

サイバックの王立研究所を抜けて、外で活動を続けていた最中だった。
アステルはにっこりと笑ってリヒターに問いかける。

「夢、か。そんなもの考えたことも無いな」
「嘘だ。一個ぐらいはあるだろ?」
「…そうやって人のことを決め付けるのはどうかと思うがな」

ふぅ、と溜息をつくとリヒターは不敵に笑って見せた。

「例えば…人間が滅びればいい、とか思っていたらお前はどうするつもりだ」
「どうもしないけどさ。でもそれはあまり共感できないな」
「……。」
「人間も、エルフも、ハーフエルフも。皆一緒の生き物なんだ。
本当なら協力しあって生きていかなきゃならない。そうだろ?」

アステルは視線をリヒターからはずすと、自分の真上にある空を見上げた。
そして包み込むように両手を前に広げる。

「おかしいんだこの世界は。テセアラ人だのシルヴァラント人だの、ハーフエルフだの、
人間が勝手につけた地位に縛られてる。あの研究所だって、ハーフエルフ達の扱いが酷すぎる」

一番奥の暗い部屋に一生閉じ込められて研究を続けているハーフエルフ達をどれだけ虐げれば気が済むのだろう。
最近は神子コレットの世界再生によってまだマシになったかもしれない。
けれど今度は文明の進んだテセアラ人と今まで衰退していたシルヴァラント人の差別が酷くなってきている。

「やっぱり人間は醜いけれど。お互いを理解しようっていう努力も大切だよ」
「……アステル。お前はもう少し現実を見たほうがいいんじゃないのか」

リヒターはそう言うとふぃ、と外方を向いてしまう。
と、アステルはめげずにリヒターの背に語りかけた。

「勇気は夢を叶える魔法」
「…ゆ…?」

予想外の言葉を吐くアステルにリヒターは驚くと、彼を振り向く。
アステルはいつもの笑顔で笑っていた。

「僕のお気に入りの魔法≠セよ。そうやって否定するだけじゃなくて、行動することも大切って事さ」
「いつものお前の好き勝手な行動はその魔法とやらのせいのようだな」
「あはは。そうかもね」
「…勇気は夢を叶える魔法…」

リヒターは小さく呟くと、再び溜息をつく。

「お前、頭のネジが緩いんじゃないのか?」
「え?なんだって−?」

わざとらしく聞き返すアステルは若干黒く笑って見せると、さぁ、と言って右手を思いっきり空に伸ばした。

「話してないで研究続けなきゃね。さ、やるよ、リヒター」「誰のせいで止まったと思ってる」
「さあ?」





拍手お礼文第一号
(08.11月から09.10月)

アステル好きだ
でもマイナーすぎて誰もわかってくれません…




2009.10.24



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