「誠二、誠二誠二誠……」

ぶつぶつとただ弟の名前を彼女はその口から吐き出す。
これは歪んだ愛だ。
呪いのようにその名を呼び続け、彼女の視線の先には1枚の写真。

「張間美香…あの小娘が……っ」
「あのさあ、いいじゃない別に。弟くんが誰と一緒に居たってさ」
「良くないわよ!」

ばん、と勢いよく机を叩くと、矢霧波江は此方を睨み付けた。
良くない、良くなんかない。
誠二を守るのは私なのよ!

( もっと現実を見ないといつか自滅するするよ、なんて言ってあげるほど俺は優しい人間じゃないんだよね )

そう、とただ頷いて中断された作業を続けようとパソコンに向かった。


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