昔の彼は確かに大きくて、強くて。 そんな彼に俺は少し憧れてたりしてたんだ。



.昔を夢見たあの日



( なんて言っても、今の彼は俺より小さいんだけどね )

ふとそう思い、アメリカは苦笑した。今日は久々にイギリスの家に来ていた。しかし、肝心のイギリスは何処かに出かけていたようだ。家の人にそれなりのテーブルと椅子がある部屋で待っているよう言われ椅子に座り頬杖をついていた。外は相変わらず雨が降っている。

「いつになったら帰って来るんだよ…」

せっかくこの俺から遊びに来てあげたのに。むぅ、と頬を膨らませる。でももし帰ってきたとしても、これといって話題は無かった。彼の口から昔の話はよく飛ぶけれど。

「今の俺を見てもらわないと話は進まないんだぞ」

小さな声で力なく言う。

「――アメリカ?」

静かに名前を呼ばれ、アメリカは振り返った。そこには、おそらく走ってきたのか、肩を上下させた彼が居た。ほんのりと頬が赤い。

「わざわざ走ってきてくれたのかい」
「当たり前だろ…っ。お前が来てくれたなんて、う…」
「う?」
「う、嬉しい、から、さ…」

頬を赤く染めて彼は笑う。

( なんだかいつもと違うんだぞ )

気持ち悪いぐらいに、と付け足してみる。いつもの彼ならきっと、
『べ、別に頼んでねぇだろ!』
とか言ってそっぽ向きそうなのに。いつもと違う理由はなんとなくわかっていた。

「君、酔ってるね」
「…はあ?酔ってねえよ」

そう言いながらも、やっぱり顔は赤いし、足元はふらふらしている。

「酔ってるよ」
「酔ってない」
「……。」

認めようとしないイギリスにアメリカは眼を細めて彼を見た。いい年して何やってるんだ、この人は。アメリカは苦笑すると

「とりあえず、こっち来て座りなよ」

と空いている椅子を引いて勧める。彼はしばらく此方を見ていたが、ふらふらと近づいてちょこんと座って見せた。少し赤い顔を俯かせて、ぼけーっと何処かを見ている。

「……か…」
「何だよ?」
「あ、いや……」
「……変なアメリカ」

眉を垂らして微笑む。こんなに優しく笑う彼は何年ぶりに見ただろう。確か、独立前だ。俺がまだイギリスの弟だったとき。

「……君はまだ…昔の俺が好きかい?」

そんなことを聞いてみる。すると彼はきょとんとして、じっとアメリカを見た

「好きだよ」

そんな言葉を簡単に吐く。―――…やっぱり昔の俺しか見てないのか…。

「…でも」
「え?」
「今のアメリカも好きだ」
「……っ」

やっぱりあの優しげな笑顔を此方に向けて言う。全然らしくない。彼がこんなこと言ったの初めてだ。

「……本気で言ってるの?君らしくないよ」
「そっちこそ何言ってんだよ。俺はいつも…っ」

彼は眉間にしわを寄せて眉を吊り上げる。何だか涙目だ。

「だ、だっていつも君、昔の俺の話ばかりじゃないか!昔は可愛かった、とかそんなことばっかり言って…っ

どうせ、照れ隠しに言ってたんだろう。このツンデレ眉毛め。
でもちょっと嬉しかったとか、そんなこと一生言ってやるもんか。

「くたばれ、イギリス…」

唇を尖らせて小さく呟く。彼が微かに唇の端を上げたようなそんな気がした。





英米のつもりで書いたのに
なんだか米英寄りだな!


2009.9.19



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