例えば、例えばですよ?俺がキャプテンのこと嫌いだって言ったらキャプテンは泣きますか?


天馬の純粋な疑問に拓人は目を見開いて、忙しなく動かしていたシャーペンを持つ右手を止めた。

「嫌い…なのか」

戸惑いから引き攣るように笑ってしまう。拓人はノートから顔を上げて天馬を見ることができなかった。自分の目に涙の膜が張っているのを知っていたから。

「ちっ違います!もしですよもし!」
「そうか…なら…いいんだが」

拓人は緊張で高鳴っていた心臓をなだめて、深く深呼吸をした。
拓人と天馬はつい先月関係を持ったばかりであった。
思わず、魔がさしたとしか言いようがない。キスをしても天馬が嫌がらなかったから。良いかと尋ねて、はい、と答えたから。だから。
蘭丸は理性が足りないと言った。南沢は最後まで愛してやれと言った。
天馬は拓人が好きだと言った。
ならあの時の俺の行動は少なからず吉だったのではないか、そう拓人は今までずっと思っていた。
それなのに。


「…どうして、そんな事」
「え、あ、あぁ、キャプテンってどのくらい俺が好きなんだろうと思って…」
「世界で一番」
「あっいや、ならいいんです、なら…」

天馬は恥ずかしそうに笑って、拓人の白く骨張った小さめの手を眺めた。
あの手が暖かいことを天馬はよく知っている。

「泣いてくれるんですよね。」

天馬は満足そうに言って、拓人の手に触れた。拓人はシャーペンを置き、初めて天馬の顔を真っ直ぐ見つめた。

「…キャプテン?」
「泣くよ。三日三晩」
「泣きすぎです」

天馬はふふ、と笑って、その顔が拓人は何より好きだった。





























(110513)
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