「だから、ちげぇって」

静雄は電話越しの誰かとびしょ濡れのまま会話していた。臨也が見兼ねてふわふわのバスタオルを投げると静雄は見事に受け取った

「サンキュ、…は?だからよぉ…」

通り雨にやられるとはついていない。傘を持っていなかったふたりは一先ず近かった臨也のマンションに逃げ込んだのだった。
臨也は濡れた髪をタオルで乱暴に拭きながら窓から曇天の外を眺めていたが、未だに誰かと電話する静雄が疎ましく感じて、臨也は静雄を睨みつけた

「そうじゃねぇって。お前が知らねぇことを俺が知ってる訳ねぇだろ」


静雄は。
膝下まで折ったスラックスから伸びる足に張り付いた、濡れて濃くなった灰色の靴下を指で脱ぐ最中だった。
ふくらはぎ下までの長さのそれを、左手には携帯電話、あいている右手でずるずると足首まで下ろす。
湿って脱ぎ難いらしく、静雄は右足を外側に折り、靴下を無理矢理雨に濡れて真っ白になった足から引っこ抜いた。
座って脱げばいいのに。臨也は変に白い静雄の足を眺めながら思った。
そして何故か網膜に張り付いた静雄の情事の足がチラつき、臨也は慌てて静雄の足から目を離す。

「…チッ…いいよ、俺が聞いといてやるから…うん。はいはい。じゃあな。」

静雄は深いため息をついて携帯を閉じるとソファにどさりと体を沈めた。
携帯をテーブルに投げ置き、静雄は左足の靴下を右手とはうって変わっていとも簡単に脱ぎ払う。

「誰?」
「あ?あぁ新羅。セルティと喧嘩したんだと。」
「珍しいね。いつもはすぐ新羅が謝って終わりだろ?」
「セルティが浮気したーとか言ってよぉ…あーめんどくせぇ」

臨也はうなだれる静雄を見、暖かい珈琲でも入れようとキッチンに向かう。
すると静雄は臨也のいつもの饒舌がないことに気付く。


「なぁ臨也」
「なぁにシズちゃん」
「妬いた?」

臨也はぴたりと止まり、忌ま忌ましげな顔をして振り返った。頬は微かに赤い。
静雄はにまりと不敵に笑った。

「…とりあえずそのびっしょびしょな服でソファ座るのやめてくんないかな」
「つまり?」
「シャワー浴びてきてよ」
「その後は?」



「…シズちゃんのえっち」
「どっちが」

























(110512)
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テーマ「人外ファンタジー」
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