「ば〜か〜と〜の〜〜!」

大理石に反射する少年の声にシンドバッドはどっと疲れが増した気がした。
後ろに控えていたジャーファルがつまみ出しますか?と尋ねるがシンドバッドは疲れをあらわにした顔でいやいい、と呟いた。
次の瞬間背中に衝撃。ジュダルは軽い身のこなしでシンドバッドの背中に飛びついた。

「よぉばか殿!何シケた面してんだよ」
「シンは今しがた仕事が片付いた所なんです。」

シンドバッドに変わりジャーファルが答える。仕事を溜めていたシンドバッドに非があるのだが、ジャーファルの飽きれは疲れきった主に纏わり付くジュダルに向かったのだ。
ジャーファルの声の刺に気付いたジュダルはシンドバッドにしがみついたまま(つまりはジャーファルより高い位置で)、ジャーファルを睨みつけた。ジャーファルも負けじとジュダルの瞳を睨みつける。シンドバッドは溜息をついた。



「あいつ、お前のこと大好きだよな」

シンドバッドの自室の大きなベッドの上で寝転びながらジュダルは呟いた。
シンドバッドはベッドに腰掛けながらジュダルの前髪を弄んでいたが、ジュダルの言葉に目を微かに見開いた。

「まぁ…俺もあいつのこと好きだしな。」

勿論他の奴らも皆好きだぞ。
本当に疲れているのだ。声にいつもの覇気がなかった。

「ふぅん…」
「それに、あいつの好きとお前の好きとじゃ意味が全然違うんだよ。」


ジュダルはシンドバッドの顔を見上げた。少し隈がある。ジュダルはふぅんと気の抜けた返事を返した。

「俺、もう今日は帰る」
「…そう」

ジュダルはひょいと飛び起きてベッドから降りた。シンドバッドはジュダルの前髪に触れていた手をさ迷わせてから自分の前髪を掻き上げた。
その様をジュダルは微かに笑って、長い三つ編みをなびかせながら少年は窓から飛び降りた。




「素直になったらどうです」

嬉しかったのでしょう?そう後ろに控えているジャーファルの言葉にシンドバッドは豪勢な夕食に伸ばしかけた手を止めた。

「お前…どっちの味方なんだよ…」
「勿論シンの味方ですよ」

振り向いてジャーファルの顔を見ると彼は満面の笑みを称えていた。その顔にシンドバッドは顔を引き攣らせ、ジャーファルの横にいたマスルールは首を突っ込まないよう二人から視線を反らした。


「彼に大人の駆け引きは通用しませんよ」
「…わかってるよ…」
「くれぐれもお戯れは慎むように」
「わかってるって」
「わかってないでしょ」


シンドバッドは黙り込み、大きな溜息をついた。















初歩的ミス修正
(110417)
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