ぐい、ばちゃん。
後ろ髪を掴まれて水の中へ顔を突っ込まれる。口や鼻の中へ冷たい水があっという間に入り込む。ワイシャツの襟やスーツもびしょ濡れだった。

「やぁだ」

明るい声と共に水中から顔を引っ張り出される。思い切り咳込んだ後デリックは僅かに残っている意識を集中させた。

「僕もう飽きちゃったぁ」

サイケはけらけらと笑いながら再びデリックの顔を水の張った桶へ沈める。飽きたんじゃねぇのかとデリックは脳内で悪態を吐きながら冷たい水を体内へ吸収した。



昔一度、どうしてこんなことをするのか尋ねたことがある。
サイケは笑いながらデリちゃんが大嫌いだからだよ!と答えた。そうか、俺はサイケから嫌われているのかとデリックは理解して、もう抵抗することをやめた。






「げっ…ほ、ぅ…う…!」
「ちょっとぉーデリちゃん汚いー」

漸く折檻が終わり、デリックはフローリングにしゃがんで咳込む。大きく深呼吸し、空気のありがたさが身に浸みる。サイケはつまらなそうに言うと桶の中の水を頭からデリックにぶっかけた。
デリックは冷たさに体を震わせ、次に来る仕置きに体を縮こまるせる。
サイケは冷たい目でデリックを睨みながらしゃがみ込み、デリックと目線を合わせた。
同じピンクの目が合わさる。
次の瞬間サイケはにこりと笑ってデリックの冷えきった体を抱きしめた。


「デリちゃん大好きだよ」



デリックは笑ってその暖かい背中を抱きかえす。
サイケはずっと昔に壊れたままだった。















(110327)
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -