俺が躊躇ったのは、奴の指先が予想以上に冷たかったからだ
思わず触れた手を引っ込めようとするが男はそれを許さなかった。触れていた手を握られ、座っていたベットに押し倒される。
「…おい…」
「君はどうしたいんだい?私とセックスしたいんだろう」
「ちげぇよ!」
ガゼルは女のような顔で僅かに笑みを浮かべ、冷たい指先で俺の首筋をなぞった。俺は体をよじり、俺に覆いかぶさるガゼルの体を押し返した。
「退けって…!」
「誘ったのは君だろう、私をその気にさせておいて自分が怖じけづいたら抵抗するのかい?」
「誘ってねぇよ!」
違う。誘ったのは事実だ。
でもあまりにも奴の指が冷たかったから、熱を持て余した俺の頭を現実に引っ張り戻した
まるで期待に体を熱くしているのはお前だけだと言われているようで、俺は酷く自己嫌悪に陥った。
馬鹿だね、と俺の思考を読んだかのようにガゼルが囁いた。
俺が目を見開いたのとガゼルの冷たい指先が俺の内ももを撫でたのは同時だった。
「つめたっ…!お、い…」
「大丈夫だよ」
珍しく優しい声音で囁かれる。熱い息が耳にかかり俺は息をつめる。ガゼルは俺の足の間に体を納めて次の瞬間、脈打つそれを俺のそれに押し付けた。
「ヒッ…!」
「私も同じだから…」
冷たい指先が俺の火照る顔を撫でる。
俺はガゼルの腕を思わず縋るように掴んだ。じんじんと熱が下半身から広がる。ガゼルは熱の篭った微かな笑いを吐いて俺の顔を見つめる。
汗で張り付いた俺の前髪をガゼルは指で綺麗にどけたあと額に唇を押し当てる。
「躊躇わなくていいよ、私も同じ位欲情してるから」
「んっ…だよ、それ…」
ガゼルはどうせ俺の考えていることはお見通しだから、俺が安心したって解ってると思う。
だからだ
「…好きだよ、バーン」
だから、そんな熱っぽい声で俺を呼ぶんだろう。
俺が喜ぶことをガゼルは全て心得ているのだ。
(110324)