「はい」

彼から手渡されたのは深い紺色をした小さな箱だった。
私は素直にそれを受け取って、夕焼けで見えない彼の顔を見上げる。夕焼けで海はオレンジ色に染まり砂浜は私達の影が色濃く映っている。

「何?これ」
「開けてみて」


そう言ってロココは砂浜をゆっくり歩いて行く。私は箱の蓋を開けて、中に入っていたものとロココの大きな背中を見比べる。彼は出会ったあの日から随分背が伸びた。


「ロココ……」
「んー?」
「これ…」
「……うん」


驚きで声も出ない私は、ただただ戸惑った。ロココは振り返り(やっぱり夕焼けで顔は見えない)私の方へ戻って来る。私の手の中には、太陽の光でキラキラ光る指輪。


「ナツミ」


私を呼ぶ声も低くなった。
私を抱きしめる腕も随分と男の人らしくなった。
私は彼の胸に額を当てて、彼の心臓の音を聞く。少し心拍数が速い。
ふ、とロココの顔が私を覗き込むように迫ってきた。私は明らかにキスを迫るような彼の顔から時間の顔を逸らす。
私は素直ではない可愛くない女だから、ぐちゃぐちゃになった顔を彼に決して見せたくなかった。
彼はそれに笑ったようで、私を抱きしめる力を強くする。


「ナツミ、僕は誓うよ」

私はそれに答えずしゃくりを上げる。

「君を一生、守り通すって」

ロココの豆だらけの手が私の顔を包んだ。私は拒むが優しい手の感触に遂に逆らい通すことは叶わなかった。
漸く彼の顔が見えた。夕焼けに染まっているせいなのか心なしか赤くなっている気がする
ロココは私の涙を親指で拭い、それはそれは太陽のように微笑んだ。


私は精一杯の答えを伝える為に、彼の広い背中へ腕を回した。指輪をつけて貰うのはこの後でもいい気がする。
















(110324)
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