暗転。
目の前には冷たく自分を見下ろす瞳。古びた天井の木目。
外は雨が降っていた。肌寒い、少し湿った畳に肩を縫い付けられて身動きが取れない。伝七は戸惑い、そして確かに恐怖を抱いた。
兵太夫の暗い感情のない瞳は伝七を見下ろしている。伝七はゆらゆらと視線を漂わせ、顔を背けた。
外ではしとしとと雨が降っている。まだ日は高い筈なのに部屋は薄暗かった。
少し足をよじるだけの微かな衣擦れの音が妙に大きく部屋に響く。

「…伝七さぁ……」

静寂を破ったのは兵太夫のいつもと変わらない優しげな声音だった。瞳も、押さえ付ける腕も、泣きたくなる程恐ろしいというのに。


「な…に……」

必死に声を絞り出し、伝七は兵太夫の顔を盗み見る。
兵太夫は薄く笑って(その場違いないつもの笑顔に少し安心する)、呆気なく伝七の上から退いた。


「本当…」
「兵太夫……?」


雨脚は強くなる。
だからだろうか、兵太夫が何を言ったのか、伝七は聞き取ることができなかった。















初歩的なミス修正しました
(110322)
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -