さらりとタカ丸の指から少し癖のあるが細くしなやかな黒髪が滑り落ちる。少女は頬を染めて視線を泳がせた。タカ丸は気付いていないフリをして笑う。鼈甲の櫛で丁寧に少女の髪を梳かし、タカ丸は緊張で強張る少女の肩に触れた。

「…!タカ、丸さ…」
「しぃ、」

タカ丸は微かに少女の赤く染まる耳に口を寄せて低く囁いた
少女の玉のような肌はみるみるうちに赤くなる。タカ丸はにこりと笑って、少女の髪に触れながらその唇にそっとそれを重ねた







「このクズ」

タカ丸は声に振り向く
そこには腕を組んだ久々知が佇んでいた。肌寒い風に青みかかった癖のあるが細く長い黒髪はなびき、久々知は顔にかかるそれをうっとうしそうに払った。
タカ丸は目を細めてそれを見ると、パッと人当たりの良い笑顔を浮かべる

「何?」
「お前プライドとかねぇの?」
「だから何が」
「しらばっくれんな色欲魔」


はた、とタカ丸は目を丸くする
そして嫌になる。久々知兵助という男はタカ丸の笑顔をいとも簡単に踏み潰す。

「いい人ぶってんのぉ?勘違いしないで、和姦だよ」
「お前とだらしねぇ女の性事情なんか聞きたくないんだよ。」
「じゃあ何」

久々知は眉間にこれでもかとシワを寄せ、小石混じりの地面を踏み締めながらずんずんとタカ丸に近付く。
タカ丸は怯み、僅かに後ずさるが久々知の生白い腕が伸びタカ丸の腕を掴んだ。


「な、に…!」
「お前!」

タカ丸はその妙に生々しい男の手を振り払おうと振りかぶったが、久々知はそれを良しとしなかった。

「やることが一々いやらしいんだよ!お前女の趣味悪ぃ!」
「なっ…はぁ!?」
「何ビクッてんだよ!俺に何か言うことあんだろ!」

タカ丸は目を見開き、ゆっくりと腕を下ろす。久々知は溜息をつき、明らかに戸惑っているタカ丸を見つめた


「…謝れば、いいの」
「いらねぇよそんなん」
「じゃあ、何を言えば良いの」
「俺はお前に抱かれて気持ち良かったよ」


タカ丸はぽかんと久々知の顔を凝視した。久々知はさも当たり前だというような顔をしている。
嗚呼嫌だ。タカ丸は久々知のこういう所が大嫌いで、愛おしかった。














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(110320)
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