円堂が死んだ


通夜には沢山の人が来ていた
稲妻中の皆は勿論、選抜で同じになったメンバーも皆して目を腫らして、笑う円堂の遺影を見ていた
風丸は信じられないというような顔をしていたし、ヒロトは泣き叫んでたし、鬼道はずっと俺の横で鼻をすすってた。
俺は、涙はでなかった。


円堂は学校から家に帰ってきて直ぐに自室で首を吊って死のうとしたらしい。
らしいというのは詳しい事を知らないからだ。
未遂の所を円堂のお母さんが見つけて、病院に運ばれたらしいが息を引き取ったらしい。
わからないのは動機だった。
遺書は見つからなかったようだし、両親も思い当たる節はないという。
部活でも変わったことはなかったし、何故、どうして、そんな疑問だけが残った。


「豪炎寺」


横にいた赤く目を腫らした鬼道が涙声で俺の肩を促すように叩いた。

「お焼香に行こう」
「…あぁ」


両親に悔やみの言葉を述べ、お焼香を済ませる。
遺影の円堂は稲妻中の制服で、サッカーボールを脇に抱えてあの太陽のような笑顔を浮かべていた。
もうこの笑顔を見ることは一生ないのだ。

俺が最後に見た円堂の顔は、酷く傷付いた顔だった。
円堂が首を吊った日、俺は部活が終わった後円堂と一緒に帰った。
帰り道で、円堂は俺に好きだと言った。
俺は円堂を罵った。
俺の腕を掴むあの温かな掌を振り払い、俺に縋るように見つめるあの真っ直ぐな瞳から逃げた
多分そこで円堂守という人間の生涯は終わっていたのだろう。


「鬼道」
「なんだ…?」
「…すまない」

「―…いいさ、判ってる」












この通夜が終わったら、俺は首を吊ろうと思う。
円堂が存在しないこの馬鹿げた世界に別れを告げる為に。




俺は円堂守という人間を心から愛していた



















(110306)
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