トムさん、俺
あいつは昔からそうだった
いつも何かに怯えて、その癖誰かの愛を求めているのだ。
初めはただの同情だった。
初め?初めとはなんだ。
この恋愛ごっこはあいつを送り出してやる為の同情にすぎない。初めも今もない。俺の中にあるあの哀れな子供に対する感情はひとつだ。
恋愛感情など芽生える訳がない
っ…あ、トムさん…!
「違う」
「トムさん」
「違う、ごめんな、静雄。こんな筈じゃなかった。」
「トムさん、」
「ごめんな」
「トムさん、聞いて下さい」
「俺、トムさんにこうして貰うことを、多分、ずっと前から、どっかで願ってたんだと思います」
だから、後悔なんてしないで下さい。
こいつは、俺なんかよりずっとずっとわかっていた
何かに怯えて、その癖誰かの愛を求めていたのは、俺だ。
(110301)