「いいんだよ、言ってしまっても。」

新羅は珈琲の入ったマグカップを両手で包んで、困ったように静雄を見つめかえした。

「人間というのはね、愛されることに貪欲なんだよ。」

静雄は何も言わずに珈琲に口をつけた。
新羅は、昔から静雄はとても臆病だと思う。彼は自分より他人に好かれる人間だ。新羅は静雄が哀れで仕方がない。

「君の願いは何?」

静雄はおずおずと新羅を見た。この仕草は彼の昔からの癖だ。怯えたように相手を見て、他人の顔を伺う。誰も君を嫌ったりしないのに。


「俺は……」



彼はいつだって望んでいるのだ。
誰かに愛されることを。














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