人工の光が届かない、月明かりも弱々しい池袋の路地裏に轟く獣の叫び。街を跋扈する黒猫は路地裏に追いやられ、獣の唸りに肩を竦めた

「やだなぁシズちゃんの嗅覚は。騙しが効かないんだもん」
「うるせぇよ。さっさと新宿に帰れノミ蟲野郎」

ひっどぉいと黒猫は芝居かかった仕草でニヒルに笑った。それがまた獣の鼻につくのだ
黒猫はひらりと妖しく光るナイフを取り出し獣に威嚇する。

「ならそこどいてよね、実はシズちゃん俺に会いたいだけだとか。」

次の瞬間カビの生えたコンクリートの壁が粉砕した。獣の投げた標識が深々と食い込んでいる。
黒猫は楽しそうに、だが確実に恐怖を孕んだ笑みを零した。しかし恐怖に引き攣る口元は獣にとってはただの余裕としか映らない。
獣の革靴が路地裏に鈍く響く。黒猫はナイフを獣に向けながら距離を測っていた。
次の瞬間、黒猫は道をふさぐフェンスにぶつかった。
獣はコンクリートに食い込む標識を抜くと、それはそれは楽しそうに笑った。
だがその一瞬、黒猫の身体が宙を浮いた。
軽やかにフェンスを飛び越えると黒猫はフェンスの向こう側で獣にひらひらと手を振った

「ッ…!臨也ァ!!」
「あっはごめんねシズちゃん!続きはまた今度!」

臨也はけらけらと笑って向こうのきらめく街へ走り去って行った。
静雄はフェンスに手を掛け標識を手放す。渇いた音がコンクリートに反射して静雄は余計惨めに思った。















(110225)
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