死ネタ
僕が死んだらどうする?と決まって尋ねる
だがこの男は俺に答えを求めていない。質問は一方通行なのだ。だから俺は答えない。全くの無視を決め込む。
質問はいつから始まったっけ
最初は僕が誰かわかる?から始まった。
僕が誰かわかる?
僕が好きな人は誰でしょう?
僕が好きな食べ物は?
僕が好きな場所は?
歌は?教科は?動物は?
僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が。
「僕が死んだらどうする?」
耳元で反響する聞き覚えがある声。
「ねぇ、染岡君」
寂しそうにか細く囁く
「答えて」
世界に二人しかいない様な錯覚に陥る。
俺は何も答えない。
「じゃあ教えてあげる」
僕の名前は吹雪士郎
僕の好きな人は染岡竜吾
淡々と答えを語っていく。やめろ、やめろと俺は胸で叫ぶ。しかしこの男に俺の声が届く筈もない。
「僕が死んだらどうする?」
俺は吹雪を見た
きらきらきらきら。光って笑っていた。染岡くん、答えて。何度も見た純粋な笑顔。ごめん。俺は漸く声を出した。
「ごめん吹雪」
吹雪は笑ってなんで謝るのと言った
その笑顔は本当に屈折のないもので俺は目を逸らす
「お前が死んでも…」
「俺は死んでやれない。」
吹雪の薄い瞳を真っ直ぐ見据えると吹雪はよかったぁと幸せそうに笑ったもしかしたら泣いていたかもしれない。
「僕、染岡くんが死んじゃったら嫌だもん。」
「吹雪」
「染岡くんが強い人でよかった」
「吹雪!」
「染岡くん、だいすき」
吹雪はいなかった。
俺はサッカーのフィールドに立っていた。
吹雪士郎は二週間前に死んだ
俺は、後を追える程優しくなかったし泣いてやれる程強くなかった。
(101127)