佐久間の華奢な背中を見ると、何故か悲しくなる
しまいには泣いてしまう俺に佐久間は呆れたように罵声を浴びせるが、俺にとってそれは安定剤みたいなものだった(別にマゾって訳じゃないぞ、痛いのは嫌いだ)
いつの間にか涙は止まって、情けない顔で笑う俺に佐久間は決まって馬鹿と言って笑ってくれるのだ


ある日の練習でベンチに座り俯く佐久間に対し、佐久間って弱いよなとうっかり口にしてしまった
何でそんな事を言ってしまったのか自分でもわからない。ただ、弱った佐久間なんてもう見たくなかったからだと思う
後悔したときには遅く、いつもならどこからそんな力出せるんだと思うような強烈なグーが飛んで来る
が、今日は何も来なかった
雹でも降るかと佐久間の顔を覗き込むが、顔はきらきら光る銀髪で見えない
佐久間は小さな声でそうかもなと呟いた

「そうだな、俺は弱いよ、多分…」

すげぇ弱い
佐久間はそう言うと肩にかけていたフェイスタオルで顔を押さえた。泣いてしまったかもしれない
俺は慌てて謝罪を口にする

「ごめん」
「なんで謝るんだよ」
「だって佐久間泣いて…」
「泣いてねぇよタコ」

はぁーと長い溜息を吐きながら、佐久間はごしごしと顔を擦った。
佐久間はフェイスタオルを取っ払って俺に向かって歳相応の笑顔を向けた

「お前の方がよく泣くじゃねぇか」
「そっそんなことはない!」
「どうだか」

けらけら笑いながら佐久間は立ち上がって傍らにあったボールをドリブルしながらコートに戻ってしまった
その華奢な背中とコートの人工芝の青々とした色がぼやけた
じわりと歪んで、慌てて空を見たが、何の意味も成さなかった。土埃とゴムやら汗やらの臭いが混じったグローブで瞼を押さえたがそれも無意味に終わった
そしてやっぱり佐久間が俺に気付いて大声で俺を罵倒するのだ
その声が聞こえるまで、俺の涙は止まりそうにない。









































(101015)
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