気持ち悪い。ジャンルカは思った。しかしそれは自分を押し倒している男に対してではなくこの自分が今押し倒されている状況全てに対してだった
ゴンドラは揺れる。それは勿論川を進み街を観光する乗り物なのだから仕方ないが、立ったり座ったりする分には何も問題はない。仮にもジャンルカはゴンドラ乗りを志しているのだ。それ位で船酔いをしていたら話にならない
しかし今この状況では別だ
マルコはジャンルカが操るゴンドラに乗りたいと言い出した。悪い気はしなかったジャンルカはひとつ返事で了承した
イタリアはヴェネチアの町並みに沿って流れる長閑な大水路をジャンルカはオールを操って無愛想に紹介していく
マルコはもう少し笑えよ、と笑ったがジャンルカはお前じゃ役不足だと一蹴した
可愛い女の子なら気持ち悪い位に愛想が振り撒ける。女好きと名高いイタリア男の血だ
しかしチームメイトだからといって男にまで笑顔を振り撒く程ジャンルカは社交的ではない
暫く無言の時間が過ぎた
川のせせらぎにゴンドラとオールが擦れる音がする。時たま違うゴンドラとすれ違い、ジャンルカは笑顔でプロのゴンドラのりに挨拶をする。
マルコは退屈そうに川に手を入れて、ぼうっとジャンルカを眺めていた
また緩やかな時間が流れる
コースも終わりに近付いて、ジャンルカはゴンドラを岸部へ寄せる。
そしてゴンドラに付いている縄を切り株の駐隻場に引っ掛けた。

「おいマルコ、降りる準備しろよ」

ジャンルカはオールを底から浮かせてマルコの方を振り向いた
そのときだった
腕を思い切り引っ張られ、ゴンドラ内に押し倒される
ジャンルカはその瞬間オールを手放してしまい、ばしゃんという水しぶきと共にオールは川の中へ沈んでいった

そして今に至る
そろそろ気持ち悪すぎてジャンルカは吐き気を催していた

「…マルコどけ」
「やだ」
「吐くぞ」
「可愛い顔してそんなこと言わないの」
「可愛くない。どけ、俺には男といちゃつく趣味はない」
「ジャンルカが女の子にモテない理由わかった気がする」
「どういう意味だよ!」

きゃんきゃん吠えるジャンルカに笑顔を見せたマルコはジャンルカの真っ白なシャツに手を伸ばした
ジャンルカは吐き気で青かった顔を更に蒼白にして制止の声を上げたがマルコは気にも止めずにぷちぷちと釦を外す
陽の光の下にジャンルカの肌が晒されていく
マルコは胸下まで釦を外すと、ジャンルカのラテン系には珍しい白い首元に唇を押し付けた
こんな所を通行人に見られたら一大事だ。
ジャンルカは精一杯マルコの肩に掴みかかり声を荒げた

「やめろ!!」
「やめない」
「頭おかしいんじゃないのか!」
「おかしいかもね」

マルコはべろりと微かに汗の味がするジャンルカの首筋に舌を這わせて怯えた目をするジャンルカを見つめた


「全部ルカのせいだよ」


ジャンルカは目を見開きマルコを凝視した
マルコは俺謝らないから、と半ば自棄になったように言うとジャンルカに無理矢理口づけた
ジャンルカは喉まで吐瀉物が込み上げた気がした































(100907)
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