君美で柊→←飛鳥です
―――今日は、柊君の撮影日。
そのあと一緒にご飯を食べようという話になって、俺は柊君のいるスタジオに向かっていた。
けれど、そのスタジオは俺の家から遠いところにあって、土地勘もなく、俺は年甲斐もなく迷子になってしまった。
「えっと、あそこに百貨店があるから、そこを右でしょ?あと、柊君なんて言ってたっけ…」
「―――あの、迷子?」
そんな風に考えていると、ふと声をかけられて俺は顔をあげた。そこにいたのは、いわゆる今時のコって感じの男の子で、ちょっと不良っぽかったけどイケメンだった。
綺麗に染まった金の髪が眩しくて目を細めていると、彼は俺をじっと見てきた。
「なぁ、迷子なの?」
「えっ、あ、うん…」
「へー。そんな年になっても迷子になるんだね」
繰り返し問われ、俺は恥ずかしさに俯きながらも頷いた。すると、彼が『どこ行きたいの?』と聞いてきたので『…スタジオyou』と短く答える。
「ついてきてよ。案内してあげる」
「えっ」
言うが早いか、彼はそのまま歩き始めてしまって、俺は慌ててついていく。そのまますぐに目的のスタジオに連れていってもらって、俺は深々と頭を下げた。
「あのっ!ありがとうございました!」
「いいえー。迷子には気をつけてくださいねー」
緩い口調で言われ、俺は恥ずかしくなったけれど、もう一度お礼を言って彼と別れた。
「おい、いきなり浮気かよ尻軽」
「っ」
後ろから冷たい声で言われ、俺は震えながら振り返った。そこにいたのは俺を睨みつけるようにして立っている柊君で、俺は困惑しながらも口を開く。
「そんな、つもりじゃ…」
「俺のところに来る途中で他のヤツひっかけるとかいい度胸じゃねえか。ほんと、オマエ最低だよな」
「………っ、ごめん」
本当に温度のない声で言われ、俺は条件反射で泣きそうになってしまう。許しを請うように謝ると、柊君の服をギュッとつかんだ。
「…道に迷ってて、早く、柊君のところに行きたくて……それで…」
本当は、撮影が終わるより早く行って、真っ先に『お疲れ様』っていいたかった。だけど、道に迷ってしまって、時間通りにつくのか怪しくなってくると不安になってきて。
早く、会いたくなって。
「―――もういい」
柊君はそういうと、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。突然のことに涙目だったことすらも忘れてぽかんとしてしまう。
「今度迷ったら真っ先に俺に連絡しろ。迎えに行ってやるから」
「――――うん」
「突然怒って、悪かったな」
いきなり謝られ、俺はますます驚いた。柊君がぶっきらぼうに返しながらも少しバツが悪そうにしているのも、なんだか可愛く見えてしまう。
「いいよ。俺こそごめんね」
それからすぐに、俺たちは普段の調子に戻れた。
ご飯を食べて、そのあとちょっとおしゃれなバーで飲んで。楽しい時間を過ごして、また柊君の新しい一面を見れて。
こんな時間が続けばいいと思うほど、俺は彼のことが好きみたいです。
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ちょっとだけ、松村君を出させていただきました…っ!
本文に名前を入れられなくて本当に吐血する勢いで悔しいです。
相互ありがとうございました!
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