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「……でも、そういう奥ゆかしいところが、可愛いんだよな」
朝から幸せな気持ちになりながら授業を受け、言われた通りに第一視聴覚室に向かうと、先輩が部屋の前で所在なさげに立っていた。
「慶太」
「先輩、良く鍵借りれましたね」
「ふふ、ここは実は鍵かけてないんだって。ちょっと危ないけど、内緒にしといてね」
そういうと、先輩は扉を開けて中に入る。視聴覚室は程よく広くて、暗幕を張り巡らせると落ち着いた空間になった。
「最近会えなかったけど、元気してた?」
「元気ですけど、雨は嫌ですね。湿気でだるいです」
「それは辛いよね」
いつものように9ケーキを食べなら、俺たちはそんな風に会話をしていく。
そうして、あることに気付いた。
ここには、俺が寝れるサイズの長椅子がある。俺は背が高い方だから昼寝ができるのはあのベンチだけだったのに、わざわざ探してくれたのだろうか。
だから、すぐに手紙をくれなかったのだろうか。
「……慶太?」
「あ、いえ、すみません。ちょっとぼーっとしてまして」
そう思うと、ますます先輩が愛しかった。俺が嫌だな、と感じているだけだった間に、俺のために動きまわってくれていたのだろうか。
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