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「余計なことすんじゃねーよっ!きたねえなっ!!」
不意に、そんな声が聞こえてきて、俺は友人とともに廊下に見にいったのだ。
そこにはクラスのヤツとブスカがいて、さっきの罵声は明らかにブスカに向けたものだと分かる。
「っ、でも、1人じゃ大変だよ、それ」
ブスカはそれでもめげずに、必死に言い募る。クラスメイトの手には抱えきれないほどのゴミ袋があって、俺は何となく察した。
おそらく、手伝うとでも言ったのだろう。
あれだけ邪見にされて、それでもめげないのだから本当にアホだ。黙って任せておけばこんなことにはならなかったのに。
クラスメイトはそんなブスカの馬鹿さ加減を、さらに馬鹿な言葉で無駄にする。
「オマエに頼むくらいなら1人でやった方がマシなんだよ。殴られたくなかったら余計なことしてんじゃねえ!」
「いいじゃん、ブスカがするって言うんだからさせろよ」
不意に、周りで見ていたクラスメイトの1人が言った。その言葉に、周りも賛同するように頷く。
「いいじゃねえか、ごみがゴミを持ってくって言ってるんだし」
「ついでに一緒に焼却炉に入ってこいよ」
「オマエの鞄も後で持っていってやるからよ」
その言葉に、ゴミ袋を持っていたクラスメイトが冷たい笑みを浮かべた。そして、もっていたゴミ袋をブスカに投げつける。
それからはもう想像の通り、すべて押し付けられたブスカは、なぜか他のクラスの分まで運ばされて。
投げつけられてよろめいたブスカを助けるものは誰もおらず、ざまあみろ、と思っているのが見て取れた。
「―――あー、楽になった」
「危うく汚いのがうつるところだったな」
そんなことを言いながら教室に入ってくるクラスメイトを眺めると、目があってこちらに寄ってきた。それを見て、隣にいたクラスメイトが口を開く。
「なぁ、放課後マックに行くんだけど一緒にいかね?」
「マジで!?行く行く!」
「―――ごめん、やっぱ俺パス」
俺は思わず、そう言っていた。周りのクラスメイトはとても残念そうにしていたが、張り付けた笑顔でそれとなくかわした。
何となく、こいつらと一緒にいたくなかった。
あのブスカを見る目。あんな目を向けて、当然のように毒を吐いて。
毒を吐いて、救われるのは誰なのだろう。
身体にあった毒を吐きだした俺たちの方が、救われているのかもしれない。じゃあ、その毒を、ブスカはどうしているのだろう。
いろんな考えが交錯して、1人になりたかった。
―――それでも分かることは、俺もあんな目をブスカに目を向けている1人だというだけで。
むしゃくしゃして、しばらくあいつらと口をきかなかったら、ゴミ袋を持っていた彼は何故かハブられていた。俺の逆鱗に触れたとでも思ったのだろうか。
友情なんてそんなもんなのだ、と思うと、またため息が出た。
ため息ついでにブスカを連想して、なぜだか少し胸が痛くなって。
ちょっとだけ、会いたいと思った。
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