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―――アイツを見ていると、なんでこんなにもイラつくんだろう。
うろうろと、お世辞にも素早いとは言い難い動きをするブスカを眺めながら、俺は特大のため息をついた。
今日は大掃除だ。こういうイベントって言うのはいじめられっ子には辛いもので、徹底的に無視されるか押し付けられるかのどちらかだ。
俺は何でもないふりをしてブスカを観察していたが、案の定だ。
箒をもって掃除をしようとすれば『汚いから触るな』といわれ、箒をもっていなかったら『サボっている』と睨まれる。
矛盾しているのに気づいていないのか、特に何も言い返さないブスカにまた苛立った。誰も見ていないときにこっそり雑巾を持ってくると、そのまま気配を消すように拭き掃除に専念している。
そうして、ヤツにとっては悪夢のような時間は過ぎていき。
後はごみを出すだけ、というところになった。
ブスカの観察で無駄に疲れてしまった俺は、片づけをやんわりと友人たちに任せると、教室で早々と席についていた。
「柊、この後どうする?」
「どうすっかなー。マックでも寄るか?」
「賛成」
寄ってきた友達とそんなことを話しながら、すっかりブスカのことなんか忘れてしまっていた時。
不意に、廊下が騒がしいことに気付いた。
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