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おかしいくらい、笑っちゃうくらい。
大嫌いだと言いきかせても、目が追うのだ。散々罵声を浴びせても、抱きしめたくなるのだ。
自分に嘘をつかなくなった途端、素直に飛鳥を求めるようになった途端、俺は本当の『柊正人』になれたんだ。
嘘をつかなくていい、素直になればいい。
虚勢も愛想も、飛鳥の前では無意味なのだから。
「好き、大好きだ」
壊れたように、好きを繰り返していると、飛鳥の腕が俺の背中に回る。
「うん…、俺もっ、大好き…っ」
相変わらず涙にぬれた鼻声だったけど、飛鳥は確かにそういった。
その瞬間、胸に湧き上がる感情をなんと表現しよう。何度言われても、全身に温かい気持ちが満ちて、簡単に泣いてしまいそうになるのだ。
「飛鳥…」
「うん、大好きだよ、正人」
お互いの背中を撫でながら、お互いに好きを繰り返す。
セックスだけじゃなくて、肌の触れ合いや、感情の共有も、俺に安息と穏やかな快感をもたらす。
幸せとは、こういうことなのだろうか。
たかだか20年の人生で飛鳥に出会えたことは、本当に奇跡のようだ。
俺は泣きたい気持ちを振り切るように、わざと乱暴に飛鳥を押し倒す。飛鳥は突然のことに一瞬身を固くしたが、すぐに俺を抱き寄せてくれた。
―――今、俺は奇跡とともにあるのだ。
それは恐怖でもあるし、何でもできる最強の武器を手に入れたようにも感じる。
いっそ、こんな気持ちない方が、なんて思ったこともたくさんある。
―――でも今は、死ぬまで向き合い続けるから、ずっと続いていて欲しいと願うのだ。
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