───モデルを辞めて何が変わったということもなく。

俺、芹沢飛鳥はビックリするくらい穏やかな日々を過ごしていた。

無事二年生になることも出来たし、短期のバイトを始めたりもした。

卒業してモデル活動に本腰を入れているジンさんとはあう機会が減ってしまっているが、ナオ君や慶太とは頻繁に連絡を取り合っている。

あえて変わったところを挙げるなら、大学での友人が増えたことぐらいだ。

モデルをしている間は撮影が忙しくあまり遊ぶこともできなかったが、学食で日が暮れるまで語ったり、誰かの家に集まって飲んだりするのはとても楽しかった。

柊くんも、俺が交友を深めるのを応援してくれている。

そして、モデルの仕事が無い日は俺の大学まで迎えに来てくれたりするので、こんなに幸せでいいのかと疑うくらいだ。

そんな風に日々を過ごしていたある日。

今日は柊くんが迎えに来てくれるからと友達と別れようとすると、女の子の1人が言った。

「ねぇ、柊くん紹介してよ」
「……え?」

言われた言葉に、目を丸くした。

そんな俺に、女の子は笑う。
「いいじゃん、仲取り持ってっていう訳じゃないんだし」
「あわよくば狙ってるクセによく言うぜ」
「あは、バレた?」

他の友達と笑いながら繰り広げられる会話に、俺は言葉を失う。

俺は、柊くんの恋人で。

恋人からしたら、あわよくばっていう気持ちが少しでもあるなら近づいてほしくない。俺は男だし、女の子の方がいいっていわれたら勝ち目はない。





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