8
「――――あ」
その時、不意に電光掲示板から音楽が流れた。
「スカイブルーだ」
「知ってるの!?」
俺は思わず聡に詰め寄った。すると、聡は戸惑いながらも頷く。
スカイブルーとは、ロック系インディーズバンドで、今電光掲示板に流れたのはメジャーデビューの速報だ。
ヘビメタまで行かないけれど、派手なパフォーマンスが特徴で、俺は彼らがストリートミュージシャンをしているころからファンで、CDだって買ってコンサートにも行っていた。
しかし、悲しいかな理解者は今までおらず。三谷に至っては『理解できない』とバッサリ言われたほどだ。
だから、聡が知っていたことに驚いた。
「え!じゃあCDとか持ってたりするの!?」
「うん、あの中だと『イノセント』が一番好きかな」
「マジでかー!!」
あの中でイノセントをチョイスするとは!!
「え、じゃあ『フォール』とかも好き!?」
「あのギターすっごくいいと思う。歌詞も共感できるし」
「うわー!同志―!!」
嬉しくて、俺は思わず叫んでいた。この場でハグをしなかった自分を褒めたいくらいである。
「じゃあさ、今度俺の家に来なよ!限定で出したライブDVDとかもあるから一緒に見よう!」
「え!本当?楽しみ!」
嬉しそうに言われ、俺は大きく頷いた。
こんなところに理解者がいたことに、俺は興奮を隠せない。
そうして、駅前につくまで二人でひたすらスカイブルーについて語り合い、気がつけばだいぶ打ち解けていたのだった……。
[ 8/22 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
top