5




それでも、一つ謎が解けて、俺はちょっとホッとした。この様子だと、もし罰ゲームだったとしても嫌われては無いらしい。

「で、あゆむは水脇知ってたの?」

不意に三谷がそう聞いてきて、俺はうーんと唸りながら素直に答えた。

「文系にすっげえ美人がいる、ってだけ知ってた」

高校時代の水脇の印象は、その程度だった。噂で綺麗だとは聞いていて、廊下ですれ違った時に『確かに美人』と思ったぐらいだ。

その麗しさは女子でも認めていたほどで、学校一の美人といえば、どんな女の子も差し置いて水脇だった。

「ある意味伝説だよなー……」
「もう、湊君それどういう意味?」

むっとむくれている水脇に、俺は内心苦笑する。水脇のサバの味噌煮はすっかり無くなっていて、綺麗に骨が残されている状態だった。

「さて、俺と香澄は三コマ目あるけど、水脇は?」
「僕はもう帰れるよ」
「じゃああゆむと一緒だな」
「じゃあ、一緒に帰ろう?」

トレーを持った三谷はそういうと、香澄を連れてさっさと授業に行ってしまう。取り残された俺に、水脇はそう言ってきた。

「あぁ、うん」
「やった。嬉しい」

特に断る理由もなくて俺が頷けば、水脇はとてもうれしそうに笑う。あたりに花が咲きそうなくらい華やかな笑顔に、俺はちょっと良心がいたんだ。

―――これくらいでこんなに喜んでくれるってことは、罰ゲームじゃないよな……

一瞬でも気持ちを疑ってしまったことが申し訳なかった。水脇がトレーを返却してきたのを確認すると、つれだって一緒に帰ろうとする。





[ 5/22 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -