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水脇は文学部なのだ。当然高校時代は文系にいて、俺とは校舎もクラスも違っていたのだ。
なのになぜ?
正直大学で話したのなんて最初の一カ月程度で、そのくらいで好きになってもらえるなら今頃俺はモテモテだ。
予想以上に接点が少なかったのに、それでも俺を好きだという水脇に疑念が浮かんでくる。
――――もしかしたら、俺が浮かれてただけで、罰ゲームとかだったんじゃ……
その方が納得がいく。
「……うわー、そうしたら俺めちゃくちゃ恥ずかしい人じゃん」
もしそうなら、穴があったら入ってしまいたいほど恥ずかしい。手が震えていたのも、もしかしたら地味な男に告白するのに対する嫌悪感だったのかもしれない。
「……あ、噂をしたら水脇くん」
「っ!!」
俺はバッと顔をあげると、香澄のみている方向を見た。
そこには水脇がいて、1人だったにも関わらず様々な方面から視線を浴びまくっていた。おもに羨望の。
そんな水脇は、食堂でトレーを受け取ると、誰かを探すようにきょろきょろしていた。
そうして、俺とばちっと目が合うと、まっすぐこちらに向かってきたのである。
「湊君!」
「…………よう」
まっすぐに寄ってきて、にこっと花のような笑顔で真っ先にあいさつされると悪い気分はしない。むしろ、ちょっといい匂いのする水脇に何だかくすぐったいような気分になる。
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