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すると、聡は泣いていた。

「……っ」

声も出さず、静かに涙を流す聡に、頭に上っていた血が一気に下がっていくのが分かる。

「聡!?どうしたんだ!?」
「……う、嬉しいのと、申し訳なくって」

俺が肩を掴んで問いかけると、聡は泣きながら呟いた。俺は聡をソファーまで連れていくと、落ち着けるように飲み物を差し出す。

「―――ありがとう」
「……ごめんな、いきなり連れ出して」
「ううん、人前で手をつなげて嬉しかった」

ミルクを飲みながら、そんな風に笑う聡に、ギュッと抱きしめたくなる。

だけど、それを理性で抑えて聡の話を聞こうとすると、聡はゆっくり話し始めた。

「……湊を好きになったの、高二の文化祭なんだ。学校行事に疲れてた時に、ココア奢ってくれて『頑張ってるのはみんな知ってるから。たまに甘えたってバチは当たらないさ』って励ましてくれて…それがすごく優しくて、嬉しかったんだ」
「あー……そんなこともあったような」
「覚えてなくたっていいよ。湊にとっては記憶にも残らないくらい当たり前のことだったんだろうし。でも……きっかけはそれかな」
「でも、それじゃ別に幻滅したりしないけど」

そういうと、聡は困ったように笑った。そうして、チケットをちらりと見ると、こう続けたのだ。

「僕、スカイブルー好きになったの、湊が好きだって聞いたからなんだ。少しでも近付きたいって、それだけ。不純だろ?」
「え……っ」
「こんな曲、湊はどんなふうに聞くのかな、これなんか好きそうだな…そんな風に考えるのが楽しくて、まさかコンサートに誘ってくれるなんて、思ってもなかったんだ」

そういうと、聡は俺にチケットを押しつけて来た。胸の中にある聡の手を取ることもできず、俺は戸惑いながら聡を見る。

「……不純な僕に、このチケットは似合わないよ」





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