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「悪いけど、聡と行くから」
「でも、彼嫌そうだけど?」
「それでも鈴鹿と行く予定はないから」
「他にこんなバンド知ってる人いないじゃない。一緒に行ってあげるわよ?」
「―――いってきなよ」
俺が鈴鹿と口論していると、聡がそう言ってきた。
「僕、その日用事あるんだ。鈴鹿さん良かったらいってきなよ」
「あら、本当?」
「うん」
口元に、笑みさえ浮かべて。あんなに楽しみにしていたライブすらも、譲ってしまうのか。
俺の中で、いい思い出でいたい?
だから、聞き分けのいい優等生を演じるのか。
なんか、なんか――――違うだろ!
「―――――好きだっ!!」
俺は、聡の手を掴むとそう叫んでいた。
それって、結局自分が傷つくのが怖いんじゃないの?
嫌われるのが怖いんじゃないの?
それくらい―――俺のことが好きなんじゃないの?
シンプルな言葉でいえば、俺たちお互い好きあってて。
両想いじゃん。何遠慮する必要あるんだよ。
「好きだから、来て!返事は『はい』しか許さないから!」
俺のあまりの剣幕に、鈴鹿も聡も目をまるくしていた。
食堂から出て来た人たちも不思議そうに俺たちを見ていたが、俺は構わず聡の手を引いて歩きだす。
そうして、俺の部屋に連れて帰ると、聡に向き直る。
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