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「湊(みなと)くんが、好きです」
―――こんなことってあるんでしょうか。びっくりです。
目の前にいるのは、大学一の美人。対して俺は、びっくりするぐらい普通の大学生。
しかし、問題は大学一の美人イコール女性じゃないということだ。
目の前にいるのは今年のミスキャンパスメンズ部門で優勝した、れっきとした男なのである。
「……あの、女の子だったの?」
「れっきとした男です」
「だよなぁ……」
この美人は、名前を水脇聡(みずわきさとる)という。大学に入った当時は、同じ学校出身ということで何度か話したが、学部が違うこともあって自然と疎遠になっていた。
それが、まさかこんな形で復縁?するとは。
「―――あの、湊君がそういう風にみてないの分かってるから。でも、まだ振らないで」
「……まずは友達からで、ってこと?」
「うん」
頷きながらも、どこか我慢した様子の水脇に、俺はぼりぼりと頭を掻いた。手なんてギュッと握りしめて、ちょっと震えちゃってんの。
「……わかった。じゃあよろしくな、水脇」
小動物みたいなしぐさに、なんだか望みを叶えてあげたいような気分になってしまい、俺はそう頷いてしまったのだった。
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