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「―――聡!」

食堂の前にいた聡を見つけると、俺は聡に向かって叫ぶ。聡は俺を見て驚いたようにしたが、ここで逃げるのは不自然だと思ったのだろう、『やぁ』というと一応は俺を見てくれた。

「ごめん、三谷くんと約束あるから」
「それは俺が呼びだすように頼んだからだ。お願い俺の話聞いて」
「聞くことなんて何もないよ」
「―――っ!これみて!」

そっけない様子の聡に、俺は鞄からチケットを取り出す。そうして、聡に見せるようにすると、一生懸命言葉を重ねた。

「一緒に行こう。聡と一緒に見たいんだ。お願いだから考えてくれ」
「―――っ」

聡は、迷っているようだった。

俺とチケットを何度も見返しながら、戸惑ったようにあたりに視線をさまよわせる。

そうして、俺の後ろを見て、目を丸くした。

「―――だーれだ?」
「うわっ」

突然視界が真っ暗になって、俺は慌てる。急に視界に聡が居なくなって、俺は慌てて後ろから伸びてくる手を外した。

「なんだよ!今大事な話――って、鈴鹿」
「何よ、ちょっとは嬉しそうにしてよね」

そう、後ろにいたのは鈴鹿だったのだ。彼女は俺と聡を見比べ、手の中にあるチケットを最後に見た。

「あー!これスカイブルーじゃない!私もこのアーティスト好きなのよね」

リサーチしたんだろう、と内心思いつつも、聡はびくりと身体を震わせた。大方やっぱり敵わない、とか思っているんだろう。すぐに顔が青くなっていき、ついにはうつむいてしまった。





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