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「―――俺はもっと、聡が知りたいんだ!何で俺のこと好きなのかも、いつから思ってくれてたのかも知らないじゃないか」
「――――そんなの、言えるわけ無いだろう!」
不意に、聡が叫んだ。押し殺した感情を一気に爆発させたかのような、悲鳴に近い慟哭だった。
「言ったら、幻滅される!キスしてもらえてすごく嬉しかったけど、僕の体は男なんだ!触って拒絶されるくらいなら、触ってもらえない方がずっといいよ!―――好きって言って、気持ちを知ってもらえて、僕はそれだけで嬉しかったんだ!僕の想いは湊が思っているよりずっと重くて、迷惑なんだ!」
「何で決めつけるんだよ!」
「分かるよ!僕は鈴鹿さんには勝てない!」
「――――――っ」
そこで出て来た名前に、息ができなくなるかと思った。
そんな俺にかまわず、泣きながら聡は続ける。
「あんな素敵な人に、僕が敵うわけないじゃないか!どうせ敵わないなら、湊が困らないように、湊の中で綺麗な思い出のままでいたいよ!」
聡はそう叫ぶと、鞄を持って家を飛び出してしまった。
「聡!」
俺は思わず追いかけようかとも思ったが、頭に血がのぼった状態で慰めの言葉なんて思いつくはずもなく。
終電には間に合うだろうか、なんて余計な心配ばかりしていたのだった。
―――そんなことがあって、俺は聡と会う機会が一切なくなってしまった。
今まで聡の方から会いに来てくれていたため、何コマ目に何の講義を受けているかもわからず。
かといって連絡先には一切出てくれないし。本当に俺は聡のことを知らないのだと思うと何とも言えなかった。
そんなとき、俺のところに一通の手紙が来ていた。
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