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「―――湊、どうかしたの?」
「あ、いや何でもない」
――その日、いつものように家に寄ってきた聡が、不思議そうに問いかけて来た。
俺はごまかしてテレビ画面に集中しようとするも、やはり隣にいる聡のことばかり気になってしまう。
今日は、レンタルビデオで借りて来た映画を一緒に見ていた。シリーズもののファンタジーだったが、お互い最新作を見逃していたので一緒に見ることになったのだが。
―――恋愛感情、だったら、違う気がする……
隣にいる聡の様子ばかり気になって、俺は映画どころではなかった。
綺麗だと思う。横顔も隙がないし、朝に盗み見た寝顔も素直に可愛かった。顔なら、ひょっとしたら鈴鹿にまさっているかもしれない。
でも、やっぱり何かしたい気持ちにはならないのだ。
好意を向けてくれる相手が、ソファーで隣り合っていて、同じ映画を見ている。俺の家で、手を伸ばせば触れられる距離で。
だけど、やっぱり男だから、って言うのが先にあるんだろうか。
一緒にいて楽しいし、いい関係を築けていると思っても。
だって、セックスとか、するわけだもんな……
そう考えると、『好き』っていう感情のあとに『?』がつくのが今の素直な感情だ。
「ねぇ、湊ってば」
「んあ?」
そんな風に考えていると、聡が俺の肩をたたいた。何事かと思って顔をあげれば、映画はすでにスタッフロールが流れてしまっている。
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