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「―――――っ!!」
「アッシュグリーンの髪、深緑の瞳…噂通りの美人だな。あのババアの趣味かはわからんが、服はもう少しマシなのを選べ」

あまりの高さに目を丸くする僕にかまわず、彼はマジマジと僕を観察している。そんな彼を観察し返せば、実はとても男前な顔をしているのがわかった。

青みがかったシルバーの髪、深い黒の瞳。鼻筋の通った彫りの深い顔立ちをしているくせに、肌は陶磁器ではないかというほど白い。

「悪いな、俺たちの勝手で連れ出して。俺はポーラ、オマエは?」
「……」

目の前の人は、自分をポーラだと名乗った。

そうか、この人がポーラだったのか、と僕は納得した。

『ポーラ』は北極を統べる王者につけられる名前である。そして、それはホッキョクグマに与えられる栄誉でもある。

ホッキョクグマとのミックスだからこんなに身体が大きいのか、と勝手に納得していると、ポーラは不思議そうな顔をした。

「喋れないのか?…歌えてるんだから、喋れないわけないよな?」

そう尋ねられ、僕は一つ頷いた後、小さく首を振った。

すかさずポーラが『どっちだよ』とあきれたような顔をしたが、僕はそれ以上応えることができなかった。

母さんの命令で、普段は喋ることは禁止されているのだ。

不用意に大声を出して喉を傷めるようなことはあってはならず、僕に話しかけることも禁止されていた。

そんな事情を、何となくポーラは察してくれたらしい。『あのババア…』と呟くと、僕の目を見てこういった。

「オマエの声が好きだから、聞いていたいんだ。とりとめのない話しでも、ゆっくりでもいから、何でも話してくれ」

そう言われ、僕は目を丸くした。そんなことを言われたのは初めてで、僕は恐る恐る口を開く。

「………ぽー、ら」
「なんだ?」
「落ちそうで、こわい…」
「ふはっ、話したと思ったらそれかよ」

僕がそう言うと、ポーラはおかしそうに笑って、でも僕を抱え直してくれた。


ポーラの両腕の中は暖かくて、僕はその温もりに寄り添うように目を閉じたのだった。





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