7
ふてくされたように言うと、俺たちはいたずらっぽく笑いあった。
前よりもいろんな表情を見せてくれるようになって嬉しい、と感じるのはきっと以前より柊君を近くに感じているからだ。
高校では挨拶しかできず、すれ違ってしまったけど。
こうして、隣に並べることがとてもうれしい―――
程なくして映画館に到着し、試写会になった。
前評判も上々な注目作なだけあり、なかなか楽しい映画だった。コメディータッチながら少しほろりとするシーンもあり、全体から目が離せない。
みんなすごく真剣に映画に見いっていた。飲み物しか買わなかったがそれをのむ暇もないほど映画に集中していて、気が付いたらクライマックスになっていた。
そうして映画を見終えた俺たちは、映画館から出ると大興奮だった。
「すっごい面白かった!」
「そうですね!もうクライマックスのシーンとか主人公に感情移入しちゃって大変でしたよ!」
「確かに普通に映画館で金払ってもいい映画だったな」
「俳優も演技派が多かったし、普通にいい話だった」
そんな風にたわいない話をしながら映画館を出て、近くのカフェに入る。当初はすぐに買い物に行く予定だったが、少しゆっくり話そうという話になったのだ。
「ここでいい?」
「うん、ナオ君ありがとう」
「どういたしまして」
ナオ君の紹介で入ったカフェは、穏やかな雰囲気がとてもいい感じのカフェだった。
暖色系で統一された空間に、緑の観葉植物がいいアクセントを加えている。
ちょうどランチタイムを少し過ぎたあたりの時間だったこともあり、すぐに俺たちは席に着くことができた。
「…ちゃんと食べれるか?」
メニューを眺めていると、ぽつりと柊君が隣から呟いてきた。
俺はメニューを眺めながら、場の雰囲気を壊さないように柊君にだけ聞こえるように話す。
「…大丈夫。もう吐いたりしないよ」
「そうか」
柊君はそれだけ言うと、何事もなかったかのようにメニューを見てしまう。
[ 89/140 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
TOP