6
―――そうして、週末はやってきた。
週末まで撮影はなかったから、みんなに会うのはあの日以来である。髪型を変えたナオ君は相変わらず新鮮で、外の明かりで見るとだいぶ茶色が明るくなっているようだった。
さすがに二人も、ナオ君の変化には驚いたようである。
「すげー、染めたの?」
「いいえ、スプレーです」
「でもいい色。もしかして春奈さんから聞いた店?」
「はい」
「俺もあそこいってるんだよな」
ナオ君の髪型に慶太が食い付き、柊君がスタイリストさんの話とか、美容師さんの話とかをナオ君にしている。
最後に見たときよりも元気そうな様子に安心しながら、俺は口を開いた。
「じゃ、そろそろ行きますよ」
「はい」
「しっかし、ジンさんも気前がいいな」
「自慢の先輩ですから」
クスクスとからかうように話すと、柊君が小さく噴き出した。そんな表情は新鮮で、俺も思わず笑ってしまう。
そういえば、まともに顔を見て話すのは久々な気がする。あの泊った時以来だ、と思うと妙に恥ずかしくなってしまった。
「何?」
「ううん、何でもない。…二人、楽しそうで安心しただけ」
俺たちが話している間に、ナオ君たちは一歩先を歩いて楽しそうに会話している。二人の好意が溢れている空間は、特別の証だと感じた。
「あの二人、うまくいくといいね」
「そういうことイイコちゃん的なことを平気で言えちゃうから、オマエ嫌い」
「もう、慶太とは何ともないし、ちゃんと吹っ切れたんだって」
嫌そうに顔をしかめる柊君に、俺は少し声を小さくして言う。
「……柊君のおかげだよ」
「勝手に感謝されても困るんだが」
「もう、可愛くない」
[ 88/140 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
TOP